自分たちの幸せ、見つめ直すアニメ完成 万華鏡をのぞいて見えたのは

原篤司
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 「平和」って、一人ひとりが感じる小さな幸せ――。そんな思いを込めたアニメーションが完成した。制作したのは、石巻専修大(宮城県石巻市)を今春卒業した6人の女性。モチーフに使ったのは、形が次々変わる幻想的な世界を作り出す万華鏡だ。

 セリフのない約6分のモノクロアニメ。主人公はわがまま放題の幼い双子だ。ある夜、2人で家を出て見つけた魔法の万華鏡をのぞくと、食べ物に困り、雨露をしのぐのに精いっぱいの貧しい子どもが映し出された。そこで2人は初めて気づく。自分たちには家族がいて、十分な食事があり、家で暮らせていることを。

 保育などを学ぶ学科で、ゼミの卒業制作の一環として1年かけて作り上げた。きっかけは、ロシアによるウクライナ侵攻だという。紛争や貧困のニュースを目の当たりにして、「平和」とは何なのかを改めて考えた。

 たどり着いたのは、小さな幸せだ。物語を考案した宍戸理さん(23)は「今の平穏な生活は当たり前ではなく、とても貴いことだと伝えたい」。一人ひとり異なる幸せの形を表現しようと選んだのが、見えるものが移りゆく万華鏡だった。

 さらに盛り込んだのは、世界中の子どもたちが災害や差別、貧困に苦しんでいることを忘れないで、というメッセージだ。

 動画の編集を担当した大森藍さん(22)は、東日本大震災の津波で祖母を亡くし、自宅も流失。「震災のかわいそうな過去だけじゃなくて、今の私たちの姿や思いに注目してほしい」と言う。

 指導した近藤裕子教授は「社会に対する大きな問いかけに挑戦した、この町の大学生の底力を見てほしい」と話している。

 アニメは同大公式のユーチューブチャンネル「ISUムービー」(https://www.youtube.com/watch?v=kHb3jUDB9z0別ウインドウで開きます)で公開中だ。アニメを元に、絵や文字を加えた絵本「まんげきょう」(32ページ、税込み1320円)も出版。絵本通販サイト「YOMO」で購入できる。

 同大図書館では、6人が撮影した万華鏡の世界などをイメージした写真作品とウクライナ出身でイタリア在住の写真家、イリナ・グレクさんの作品を集めた写真展「モノクロとの対話」を開いている。20日までで、開館は平日午前9時~午後6時半。6月には、石巻市かわまち交流センター(かわべい)での展示やアニメ上映も計画している。(原篤司)

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