「同志国」の軍支援の影響、「ODAには及ばない」 JICA理事長

加藤あず佐
[PR]

 国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が11日、東京都内の外国特派員協会で記者会見を開いた。今月、政府が導入を決めた「同志国」の軍などを支援する新たな枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」と途上国援助(ODA)の関係性について、田中氏は「ODAに消極的な影響が及ぶとは考えていない」と述べた。

 田中氏は、ロシアによるウクライナ侵攻や食料危機、気候変動などの課題を挙げ、「世界は複合的な危機に直面しており、開発協力機関として、これまで以上に重要な役割を担っていると考えている」と説明。ウクライナの地雷除去支援をカンボジアと連携して行っていることや、長年内戦が続いた南スーダンでの橋建設事業などを紹介し、「協調を重視し、各国のニーズに即した解決策を見つけていく」と語った。

 外国メディアからは、日本政府が今月、外交目的などを共有する「同志国」の軍に防衛装備品などを提供する新たな枠組みとして設けたOSAについて、「ODAと両立するのか」との質問が出た。田中氏は「ODAとOSAは、予算の面、活動地域の面でも異なる。軍事支援の存在自体が、ODAの効果に悪影響を及ぼすとは考えていない」と答えた。

 一方、ODAをめぐっては、クーデターで国軍が実権を握ったミャンマーの「バゴー橋建設計画」で、受注する日系企業から国軍系企業に約200万ドル(約2・6億円)の支払いがあったと国際人権団体が指摘している問題もある。

 田中氏は「下請け企業と国軍の関係については、関知していなかった。特定の建設活動に資金が使われるようにし、資金が国軍側に流れないよう対処しようとしている」と述べた。(加藤あず佐)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません