見通せない公判開始 袴田さん再審に向け第1回三者協議

本間久志 小山裕一 大平要 魚住あかり
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 57年前に旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田厳さん(87)の裁判やり直しに向け、検察側、弁護側、裁判所による初の三者協議が10日、静岡地裁であった。検察側が立証方針を示すのに3カ月の期間を求め、早期の無罪判決を求める関係者には戸惑いが広がった。次回協議は5月29日。

 「3カ月の猶予は何だろうと腹立たしい」。静岡市内で会見した弁護団事務局長の小川秀世弁護士は語気を強めた。「犯行着衣を立証できないから、検察官は有罪立証を断念すると確信している」。また、三者協議に参加した姉の秀子さん(90)は「検察官がずっと下を向いているのが印象に残った。半年、1年なんてどうっていうことはない。先が見えているので安心している」と気丈に話した。

 弁護団が裁判所に提出した意見書では▽厳さんの出廷免除▽一日での審理終結▽5点の衣類の証拠の排除▽できるだけ早期の判決期日の指定を要望。検察側には無罪の論告求刑や厳さんへの謝罪を求めた。また、秀子さんが厳さんの補佐人に就任する届けを出したことを明らかにした。

 弁護団によると、裁判所は確定審や再審請求審の膨大な記録を見直し、改めて必要な証拠を判断する方針という。弁護団が年内の判決を求めたが、裁判所側から「現時点で公判の期日を明らかにできる状況にない」と言われたという。

 静岡市の支援者(87)は「検察の準備不足に感じる。立証方針を出さないのは失礼だ」と話した。「袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会」事務局長の山崎俊樹さんは「少し展望が開けるかと思ったが、長引きそうだ」と落胆した。

 一方、巌さんはこの日も日課のドライブで掛川市の粟(あわ)ケ岳に出かけた。付き添った支援者の清水一人さん(74)はドライブ後に協議の内容を知り、「直前まで、検察も早く終わらせるだろう。有罪立証はしないだろうと思っていた」という期待は打ち砕かれた。

 「早く無罪にして欲しい。検察は何を争うつもりなのか。有罪立証をするということは、袴田さんを殺してもいいと言っているのと同じだ。人としての心は無いのか。神経が分からない」と憤った。

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