坂本龍一さんが東北に残した希望 津波ピアノとの出会いから始まった

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編集委員・石橋英昭
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 坂本龍一さんが、津波で被災して使えなくなった宮城県農業高校(同県名取市)の校舎に足を運んだのは、東日本大震災から10カ月後のことだ。

 「津波をかぶったピアノを修理させて下さい」

 世界的に著名な音楽家の申し出に、教職員らは驚いた。卒業式などで使われてきたグランドピアノが、体育館の倉庫でがれきや流木に埋もれたままになっている。なんとか舞台に引っ張り出した。

 出迎えた音楽教師、持田敦子さん(59)らの手を握り、坂本さんは「こんなに手が冷たくなるまで準備して下さったんですね」と、声をかけた。

 泥で汚れたピアノに対面し、弾く。くぐもった音しか出なかった。

 同行の技術者は「塩水につか…

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    岡本峰子
    (朝日新聞パブリックエディター)
    2023年4月12日11時45分 投稿
    【視点】

    東北ユースオーケストラで活動した中村さんの「僕たちが被災地を代表し、東北を背負って演奏していいのか」という葛藤。被災県に赴任して、いろんな方と触れて感じる感情です。 中村さんは記者に「(震災から)逃げていたのかもしれない」と振り返りを

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