処理水の海洋放出を前に、豪州のNGO女性が視察 きょうフォーラム

力丸祥子
[PR]

 政府が今夏までに始めるとする東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出を前に、福島の現状を理解し、教訓をアジア太平洋地域の人々と共有しようと、豪州在住の女性が6日、原発被災地を視察した。

 「この先、この地域にどれだけの人が戻ってくるのでしょうか」

 避難指示が解除されたばかりの富岡町夜の森の桜並木で6日、アジア太平洋調査ネットワークのナタリー・ラウリーさん(50)がつぶやいた。

 ラウリーさんはニュージーランドで育ち、いまは豪州を拠点に活動する。所属する同ネットワークは、専門的知識が必要なさまざまな社会問題を、市民が自ら調査し、議論できるよう支援するNGOだ。

 海洋放出などをテーマに福島大で8日に開かれる「ふくしま環境フォーラム」に合わせて、初来日した。JR双葉駅周辺や浪江町津島地区なども回った。

 太平洋諸国の人たちは核実験の被害に苦しんだ歴史を持つ。「私たちは海に親しみを持っている。処理水の海洋放出について、日本国内だけでなく、海外でも反対や懸念があるのは明らか。日本政府は計画を急ぐべきではない」

 復興が進む地域がある一方で、ほぼ手つかずの被災地も目の当たりにして、「正直、葛藤している。地元の人、漁業者や農家の視点でもっと情報を得る必要がある」と話した。

 視察に同行し、フォーラムを共催するNPO法人「アジア太平洋資料センター」の田中滋事務局長(41)は「様々な立場の人たちが処理水放出の決定過程や進め方に疑問を感じている。この現状を考える機会にしてほしい」と話す。

 フォーラムは福島大L4教室で8日午後1時半から。参加は無料で、オンライン視聴もできる。ラウリーさんが海外から見た処理水の問題について報告する。新地町の漁師らが県内漁業の復興状況を説明するほか、福島大教授らによる廃炉と復興に向けた課題の解説もある。

 問い合わせは同資料センター(office@parc-jp.orgメールする)へ。(力丸祥子)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません