トランスジェンダー女性の入浴断れば差別? 弁護士が語る問題の本質

有料記事

聞き手・伊木緑

 性的少数者への理解を広げるための「LGBT理解増進法案」についての議論が広がるなかで、「トランスジェンダー女性を自称して女性用トイレや公衆浴場に入ってくる男性がいるのでは」という不安から、トランスジェンダー女性を恐れる声がSNSなどで見られます。「新法が制定されても混乱は考えにくい」と訴える立石結夏弁護士に話を聞きました。

公衆浴場での「男女別」とは

 ――「理解増進法や差別禁止法が制定されたら、トランスジェンダー女性が公衆浴場の女湯に入るのを拒めば差別に当たるとして法律違反にされてしまうのでは」という声があります。

 公衆浴場は、厚生労働省による衛生等管理要領で男女別にすることが求められています。

 ここで前提となっている性別の基準は全裸になった時の外見から判断される性別であり、自認する性別ではありません。公衆浴場は身体の特徴に基づく性別ごとのゾーニングがされているということです。

 トランスジェンダーの方が自認する性別の公衆浴場を利用できるかは、事業者や施設の管理権者の判断となります。

 トランスジェンダーの方も状況はさまざまです。性別適合手術により自認する性別と全裸になった時の外見から判断される性別が一見して一致する方は、自認する性別の浴場を利用して問題ないと思います。

 異なる方の場合、身体的な性別でのゾーニングが前提となっていることを踏まえると、当然に自認する性別の浴場に入浴できるということはなく、施設管理権者との調整や協議が必要と思います。

 私がこのようなことを述べる以前に、大多数のトランスジェンダーの方々がご自身で同じ判断をしています。

「理解増進法で訴訟乱発」とはならない理由

 ――ただ、現状がそうでも、新法が制定されれば変わるのではないかという声も聞かれます。

 法案の内容を見ていただけれ…

この記事は有料記事です。残り1516文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

Think Gender

Think Gender

男女格差が先進7カ国で最下位の日本。生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダーについて、一緒に考えませんか。[もっと見る]