福島国際研究教育機構が開所、研究者確保や生活環境など課題も山積

力丸祥子
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 1日に開所した福島国際研究教育機構(浪江町、F―REI〈エフレイ〉)は、「福島の復興を実現する拠点」(内堀雅雄知事)と期待は大きいが、研究室をはじめ建物の整備はこれからで、優れた研究者をどの程度確保できるのかも見通せない。研究者の生活環境の整備も必要になってくる。約7年後の本格始動に向け、施設内外の課題は山積している。

 F―REIは国が設置する特別法人。ロボットや農林水産業、エネルギー、放射線科学・創薬医療・放射線の産業利用、原子力災害の知見の集積など主に5分野の研究を進める。

 復興庁によると、本施設は2030年度までに整備する。講義室や研究室、実験室のほか、短期滞在用の部屋ができる予定で、23年度に建設に向けた基本計画を練る。敷地はJR浪江駅西口の約14ヘクタールで、地権者との用地交渉はこれからだという。

 本施設の整備に先立ち、今春から県立医科大(福島市)に分室を設け、研究者ら数人が勤務を始める。研究者は段階的に増やしていく予定で、将来的には50ほどの研究グループに数百人規模の研究者が参画する施設になる見通しだ。

 初代理事長の山崎光悦氏は1日にあった開所式後の記者会見で、世界トップレベルの研究者を呼び込むため、最先端の研究機材の導入や大規模な実験室の整備などに意欲をみせた。

 F―REIが掲げる「世界に冠たる創造的復興の中核拠点」の実現には、国内外の優れた研究者の確保がカギになる。山崎理事長は朝日新聞の取材に「研究者や職員の3分の1程度は外国人になる」と述べた。家族帯同で来る研究者にとっては、子どもの教育環境も気になるはずで、国際化への対応も必要になってくる。

 双葉郡8町村には、それぞれ小中学校か小中一貫の義務教育学校があり、双葉町いわき市に避難したままだ。県立高校は、震災前の双葉郡内にあった5校は休校中で、現在は広野町にある県立ふたば未来学園のみ。将来的には、海外からの研究者増加を背景に、言語や宗教、習慣など様々な背景を持つ子どもたちに対応できる学びの場が求められる可能性もある。

 県教育委員会の担当者は「福島の子どもたちにとっても、教育の充実を図る好機と捉えている。研究者が安心して家族を連れてこられるようニーズを把握し、各市町村とも連携しながら、具体的な話を今後進めたい」と話した。

 住環境について、山崎理事長は「一流の研究者に来てもらうためには、住まいや医療、交通の充実が必要。地元のみなさんや行政のみなさんとも一緒に頑張りたい」としている。

 F―REIは、研究から発展させた産業を地域に根付かせることもめざす。この際、課題となりそうなのが働き手不足だ。

 福島労働局によると、相双地区の有効求人倍率(23年1月)は2・01倍で、県平均の1・49倍を上回る。担当者は「復興に絡む公共事業は一段落したが、相双地域には働き世代の人口が少なく、慢性的な人不足が続いている」と分析する。

 20年3月、新産業創出のため国家プロジェクトとして整備された「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)では、敷地内の研究室に入居したのべ26社のうち、9社は県内に新たに拠点を設けた。

 企業誘致に取り組む同市職員は、現在は復興予算の補助金が最大の呼び水とした上で、「進出を検討する企業の懸念材料の一つが従業員の確保」と明かす。地元雇用だけではなく、他の地域から働き手を呼び込むことが重要だとして、「今後は地域の魅力を高め、全国に誇れる地域になれるよう努力したい」と話す。(力丸祥子)

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