豪雨被災の焼酎蔵がリニューアル 人吉

今村建二
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 2020年7月4日の熊本豪雨で被災した球磨焼酎の蔵元「大和一酒造元」(熊本県人吉市)で焼酎蔵のリニューアルが完了した。豪雨から1千日の節目にあたる3月30日、お披露目された。下田文仁社長(55)は「人吉球磨の魅力をビンに凝縮した焼酎をこれからも造っていきたい」と決意を新たにした。

 大和一酒造元は球磨川に近い人吉市下林町にある。豪雨で濁流にのみ込まれ、貯蔵していた焼酎の原酒の約8割が流出。地面に埋めていた貯蔵用の甕(かめ)のうちいくつかが水に浮き、奇跡的にわずかな原酒が助かった。

 その教訓から、見学用スペースの貯蔵甕は地表に据え付けた。天井の梁(はり)からつったロープで結んだのは、水に浮いて助かった甕が、水が引いた後に「着地」に失敗して横倒しになって原酒がこぼれてしまわないようにするためだという。「実際にどこまで効果があるかは分かりませんが、できるだけの備えはしてみました」と下田さん。

 豪雨で「蔵つき酵母」が流されたが、球磨川がもたらした自然界の酵母で新たな酒造りを続けている。その酵母も育つ「麴(こうじ)室」も見学できる蔵のガイドツアーを再開させた。教室風の研修室で、災害の教訓と焼酎造りへの思いを伝える。研修室の入り口には、もともとカウンターとして使っていた一枚板に「過去に学び、原点に戻ることが新たな価値を生み出す力となる」という言葉を英語で記した。温泉水で酒造りをしている蔵元らしく、「足湯」ならぬ「手湯」のスペースも設けた。

 ガイドツアーの問い合わせは大和一酒造元(0966・22・2610)。(今村建二)

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