第1回イップスになった娘、パター握る手震えた 「優しい」父が忘れた原点

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 伊東波香さん(29)は4歳の頃、父の手ほどきでゴルフを始めた。

 かつてプロ選手をめざしたほどゴルフ好きな父だった。

 週1回、ゴルフスクールでプロコーチの教えを受けた。

 それ以外に、父の厳しい練習が待っていた。

 朝はパターの練習をしてから登校。帰宅後は素振りを繰り返した。

 夜になると、会社から帰宅した父に連れられて練習場へ。300球は打った。

 練習は苦ではなかった。やればやるほど、うまくなるのが楽しかった。毎週末、各地の大会に出場した。中学3年の時、関東ジュニア選手権で優勝した。

 実力が上がるにつれ、最初は無事にラウンドを終えるだけで喜んでくれた父の様子が、変わっていった。

 ゴルフ以外のことについては「本当に優しいお父さん」が……。

 「父の考えでは、1位以外は負け。予選落ちでもしようものなら、帰りの車は地獄だった」

 「お前、誰?」

 ハンドルを握る父に言われる。畳みかけるように怒られる。

 「準備をし尽くしていなくて、悔しくないのか?」

 「この先、どうしたいんだ?」

 延々と説教が続いた。手を上げられたこともあった。

最後、娘と本音で語り合えるようになるまでの心境を、記事の後半で父が語ってくれます。

 波香さんは思い詰めて「車の…

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2023年4月30日17時18分 投稿
    【解説】

    成功物語ではないため話をするのもツラいはずなのに、それでも告白した伊東波香さん、向後智之さん親子と、それを記事にした木村健一記者に、まず敬意を表したいと思います。 「もっと上手くなりたい」「一緒にラウンドしたい」という当初の素朴な動機が霧

    …続きを読む
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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2023年4月30日14時0分 投稿
    【視点】

    今回の連載のデスクワークを担当しています。幼い頃から一つの競技に没頭してトップレベルをめざす、スポーツの英才教育。そのメリットやデメリット、親やコーチの接し方について、ゴルフの現場から考える連載です。 この第1回は、まず、取材に応じてくだ

    …続きを読む