50分かけて妊婦健診に、そして入院1カ月 産科医がいない町の現実

東野真和
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 2021年秋から分娩(ぶんべん)の業務を休止している岩手県立釜石病院が立地する釜石市や隣接する大槌町などの妊産婦5人と、野田武則・釜石市長や平野公三・大槌町長との意見交換会が22日、釜石市保健福祉センターであった。妊産婦5人側は、自宅の近くに産科医がいないため、遠方の医療機関まで出産に行かねばならない苦労やその負担増に伴う心配などを口々に訴えた。

 村上美波さん(32)は、出産予定日を過ぎたため、隣の市にある県立大船渡病院に行って、出産まで3日間入院した経験談を披露。「近くに病院があれば、気軽に行き来できたのに」と振り返った。

 また、意見交換会後の記者の取材に対しては「近くに産婦人科医がいる方が絶対いいので、早く復活させてほしい。実現すれば、次の出産も考えようと思うようになる」とも話した。

 妊娠7カ月の二本松春美さん(26)は、今回が初産だという。体調が安定しない中、車で40~50分かけて県立大船渡病院まで健診に通ったという。その結果、つわりがひどくなってしまい、1カ月も入院した経験がある。「家族に迷惑をかけたが、身近に頼れる人がいない人はもっと不安だろう」と話した。

 また、多くの妊産婦が、緊急時にタクシー利用代金の補助が行政側からなかったり、乗車を断られたりする▽産後に育児指導を受けたくても機会が少ない▽育児指導を受ける場所が自宅から距離があるために受けにくい、などと訴えた。

 こうした厳しい意見に対し、野田市長は、産科医の再配置について「県に要望していくが、医師の働き方改革などで診療科の集約がさらに進みそうで厳しい」と指摘。そのうえで「産後ケアは、回数を増やすことも考えていきたい」と話した。東野真和

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