書店の「文化」、守るべきは誰? 支援求める業界、政治に頼る危うさ

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宮田裕介
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 まちの書店が次々と消えています。業界団体の調査によると、新刊書店が一つもない「書店ゼロ」の自治体は、全国の4分の1に達しています。書店業界は、「書店文化を守るため」と、自民党の議員連盟に対し、ネット書店の規制などの「支援策」を要望しています。

 こうした動きに対し、日本出版学会会長を務めた専修大の植村八潮教授(出版学)は、「政治とは一定の距離を保つべきだ」と警鐘を鳴らします。何が問題なのでしょうか。

 ――新刊書店がない「無書店自治体」が増えています。どう見ていますか。

 まず、新刊書店がなくなったから、本が手に入らなくなっているとの認識は間違いです。

 今や私たちはスマホの数だけ書店を手に入れたともいえます。本を買うだけなら、ネット書店で間に合います。買う本が決まっておらず、書店という空間だから生まれる偶然の出会いを大切にしている人にとっては問題で、書店はその場作りをどうするかが、試されています。

 かつて、多くの子どもたちがまんが雑誌「りぼん」や「コロコロコミック」などを買うことをきっかけに書店に親しんできました。しかし、メディア環境が変化し、こうして定期的に発行される雑誌を買うことがなくなり、書店に行かなくなった。これは時代の流れです。

自民議連への要望「特定の価値観が出る可能性」

 ――書店業界は、自民党の議員連盟に支援策を要望しています。業界団体が与党に陳情する姿はよく見られますが、何が問題なのでしょうか。

 何らかの法律の整備が必要になった際のロビー活動自体は否定しません。

 ただ、表現の自由の基盤であ…

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