六本木から消滅可能性都市へ グッドデザイン賞担当者が見つけた魅力

張春穎
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 アートが集まる東京・六本木から「消滅可能性都市」と呼ばれる山奥に移り、地域ブランドでその地の魅力を発信している女性がいる。

 「大好きなデザインの最先端に触れたい」

 加藤紗栄さん(45)は美大を出て、日本デザイン振興会に就職した。オフィスは、美術館やギャラリーが集まる六本木。金曜の夜は華やかで、企画展が始まるとパーティーが続いた。

 職場では、グッドデザイン賞の運営を担当した。形や色だけでなく、デザインがもたらす社会への貢献度を巡っても白熱する審査が刺激的で、充実していた。

 そんな折、デザインによる地域活性化の仕事が舞い込んだ。

 準備を始め、8年前、出張で岩手県西和賀(にしわが)町を訪ねた。消滅可能性都市とされ、奥羽山脈に抱かれた雪深い地だった。生まれも育ちも東京。さびれているというより、新鮮な驚きがあった。

 雪解けの湖の青さ。ビスケットを天ぷらにする郷土食。同姓が多くて下の名で呼び合い、加藤さん自身も「さえさん」と家族のように迎えられた。

 町民とともに地域ブランド・ユキノチカラを立ち上げ、地元の名産品をPRする。老舗名菓の東京進出を助けたり、どぶろくを刷新したり。ミニかまくらを作る雪と菓子を詰めた贈答品のアイデアは、地方創生大賞に輝いた。

 町の魅力にはまり、林野庁に出向中だった西和賀町職員と意気投合して2017年に結婚した。その後に退職、移住し、いまは町民としてユキノチカラの事務局を担いながら、中学校で美術も教える。

 「埋もれた宝を探す日々。一つずつ知るのが楽しい」

 デザイン、地域の力を信じて活動を続ける。(張春穎)

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