送電線使用料への原発賠償上乗せ、原告の取り消し請求棄却 福岡地裁

中山直樹 安田朋起
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 家庭向けの電気料金に含まれている「託送料金」(送電線使用料)に東京電力福島第一原発事故の賠償費用が上乗せされているのは違法だとして、福岡市の電力小売事業者「グリーンコープでんき」が訴えた行政訴訟で、福岡地裁(林史高裁判長)は22日、原告の訴えを棄却した。

 託送料金は、すべての電力小売事業者が送配電網の使用料として送配電会社に支払っているもので、一般家庭の電気代の3割ほどを占めている。経済産業省は2017年、この託送料金に原発事故被災者への賠償費用を上乗せして回収できるよう省令を変え、20年に料金変更を認可。原告側は「賠償費用は送配電事業に必要な費用ではない」「小売事業者に新たな支払い義務を課す措置を、法律の規定によらず省令で決めたのは違法」などと訴えていた。

 林裁判長は判決で、原発事故の賠償費用は「電気の全需要家が公平に負担すべき公益的な課題のための費用」と指摘。省令改正の過程も「専門家の意見や国会での議論の上で導入された」とし、経済産業相の裁量権を逸脱するものではないとして訴えを退けた。

 原告弁護団長の小島延夫弁護士は判決後の会見で「判決は国の主張をそのまま写しただけだ。法改正を経ずに、省令改正で全てが認められることは議会制民主主義の根幹に関わることで、是認できない」と批判した。

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この記事を書いた人
中山直樹
ネットワーク報道本部|都庁担当
専門・関心分野
人権問題、災害、人口減