失踪実習生をヤミ派遣、建設業界「ウィンウィン」の沼 公共事業にも

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黒田早織

 技能実習先から逃げ出した外国人を雇い、建設現場で働かせる。そんな「ヤミ派遣」が後を絶たない。建設現場への人材派遣は違法だが、働く側も働かせる側も十分なうまみが得られるのが実態だ。そもそも法制度が現実に合っていないとの指摘もある。

 昨年6月末、兵庫県加西市の工事現場で働いていたベトナム人が熱中症で救急搬送された。

 消防から連絡を受けた県警が在留カードのコピーを見ると、在留資格は「定住者」。だが、日本語をほぼ話せない。確認すると、カードは偽造で実際は失踪した技能実習生だと判明する。

 その後の捜査で、このベトナム人を雇っていた人材派遣業の男(44)=兵庫県姫路市=が浮上。男は今年、市内の建設会社にベトナム人労働者5人を派遣して働かせた労働者派遣法違反などの容疑で逮捕、起訴された。

 労働者派遣法は、建設現場への人材派遣を禁じている。指揮系統や責任の所在があいまいになって労災のリスクが高まるほか、繁忙の度合いによって「派遣切り」が生じて雇用が不安定になるため、とされる。

 捜査関係者によると、男は、実習先から逃亡したベトナム人ら20人前後を常時雇い、主に県内の建設会社6社に派遣していた。派遣先には神戸市立須磨海浜水族園のリニューアル工事などの公共事業もあった。

実習生にも「渡りに船」

 失踪実習生には、就労できるよう偽造の在留カードを用意し、住居も提供する厚遇ぶりだったという。

 なぜそこまでして失踪実習生…

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この記事を書いた人
黒田早織
ネットワーク報道本部|東京駐在
専門・関心分野
司法、在日外国人、ジェンダー
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    安田峰俊
    (ルポライター)
    2023年3月21日12時9分 投稿
    【視点】

    逃亡技能実習生(ベトナム人)の逃亡後の実態を詳しく取り上げる記事が! そうなんです、実態は「違法である」という点以外は、けっこうウインウインのケースがある。 また、派遣会社などが間に入っているケースでは、実際の労働現場の企業の人たち自

    …続きを読む