腸内細菌の変化がうつ病につながるメカニズム発見、漢方が治療薬に?

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岡崎明子
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 腸内細菌叢(そう)の変化がうつ病など精神疾患の発症システムにかかわる仕組みを、米ジョンズ・ホプキンス大学の神谷篤教授と酒本真次研究員(現岡山大学助教)らが明らかにした。腸管免疫にかかわる「γδ(ガンマデルタ)T細胞」が脳に作用しているという。論文は20日付米科学誌ネイチャー・イミュノロジー電子版に掲載された。

 γδT細胞は体内の粘膜に広く存在するリンパ球で免疫反応を制御している。

 研究は毎日、短時間攻撃されるなど、ストレスを受けたマウスではT細胞の分化にかかわる乳酸菌が減り、うつ状態になることを確認。また昭和大学の真田建史准教授、慶応大学の岸本泰士郎特任教授、福田真嗣特任教授らとの共同研究で、同じタイプの乳酸菌の減少と、ヒトのうつ病患者の重症度が相関していることも確かめた。

 またストレスにより、γδT細胞が炎症性サイトカインという物質をつくる細胞に分化し、この細胞が脳髄膜に移ることでうつ症状を引き起こすことも明らかにした。この分化にかかわる受容体の働きを抑えるため、マウスに漢方の生薬「茯苓(ぶくりょう)」の成分であるパキマンを飲ませたところ、うつ状態を予防することもわかった。

 神谷教授は「既存のうつ病治…

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    ドミニク・チェン
    (情報学研究者)
    2023年3月21日9時40分 投稿
    【視点】

    腸内環境が精神や性格、気分そして体格などに影響を及ぼすことは脳腸相関とも呼ばれ、これまでも少しづつ研究されてきましたが、うつ病との相関が見つかり、かつ漢方薬の効能の可能性まで見えてきたとは驚きです。乳酸菌は身近な発酵食品にも多く生息していま

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岡崎明子
岡崎明子(おかざき・あきこ)朝日新聞医療サイト「アピタル」編集長
科学医療部記者。広島支局をふり出しに、科学医療部で長く勤務。おもに医療、医学分野を担当し、生殖医療、がんなどを取材。特別報道部時代は、加計学園獣医学部新設問題の取材で日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞を受賞。オピニオン編集部デスクを経て、2020年4月からアピタル編集長。