「宇宙兄弟」に憧れた兄弟が誓ったこと 夢見た宇宙で目指す月面農業

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大野晴香

 人類を再び月に送る米国主導の「アルテミス計画」をはじめ、月への関心が高まる中、名古屋大発のスタートアップ企業「TOWING(トーイング)」(名古屋市南区)が月面での農業の実現を目指している。同社の技術で、月の砂を作物を育てることが可能な土壌へと変え、宇宙での食料生産を実現するという壮大な構想だ。

 愛知県刈谷市の農場。ビニールハウスでは、ピーマンが青々とした実をつけていた。根元にある黒い土は、同社の技術を活用した人工の土壌だ。

 良質な土を作るには、微生物の存在が欠かせない。この人工の土壌は、微生物の培養技術などを用いた「バイオ炭」を使ったものだ。通常は3~5年かかるという野菜などの栽培に適した土壌作りが、こうした技術でわずか1カ月ほどで可能だという。

 同社は、こうした人工土壌を使えば、有機物を分解する微生物がいない月でも、微生物がついた土壌で人間のし尿などを肥料にして植物を育てることができると説明。月面で食物を栽培することができれば、地球から膨大なコストをかけて食材などを輸送しなくても、人類が月で暮らすことが可能になるという。

 昨年2月、建設大手「大林組」と共同で、月の砂とほぼ同じ「模擬砂」にこの技術を用い、小松菜の栽培に成功した。TOWINGは今後、より月に近い環境での栽培が可能になるように、研究を進めていく予定だ。バイオ炭を用い、農業での脱炭素にも取り組む。

宇宙兄弟」で抱いた夢

 TOWINGは2020年、西田宏平社長(29)が立ち上げた。宇宙に関心を抱いた大きなきっかけは人気漫画「宇宙兄弟」だ。

 「宇宙兄弟」は、幼い日に宇…

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