神山まるごと高専、学費無償の永続にめど 所得制限なし年200万円
起業家の育成を目指し、徳島県神山町に4月に開校する私立高等専門学校「神山まるごと高専」は9日、永続的に入学者全員の学費を実質無償化すると発表した。協賛企業の拠出金を基に独自の「給付型奨学金基金」を設立し、その運用益を1学年44人(全5学年)の学費に充てる。日本私立中学高等学校連合会の事務局によると、所得制限なく全員の学費を無償化するのは珍しいという。
同校はテクノロジーやデザイン、起業家精神など一般科目以外の授業も展開し、教員態勢を充実させている。そのため、学生1人当たりの学費が年間約200万円に上る。学費を理由に入学を諦めることがないよう、海外の例を参考に、企業や個人からの支援で無償化を実現する「スカラーシップパートナー制度」を立ち上げた。
制度の仕組みは、学校の精神に協賛する企業が1社10億円をめどに、非営利徹底型法人である「一般社団法人神山まるごと奨学金基金」へ拠出する。基金は投資会社に資金運用を委託し、運用益を高専へ寄付。高専は協賛企業名を冠した奨学金を学費分として学生に支給する。奨学生は拠出企業と共同研究や新事業の立ち上げをする。
高専は、原資として100億円があれば毎年の学費を捻出できると見込む。昨年中に1期生の5年間分の無償化のめどがついたことを公表し、入試を終えた。その後も協賛が相次ぎ、目標の100億円に到達したという。
奨学金の拠出企業は、伊藤忠テクノソリューションズ▽Sansan▽セコム▽セプテーニ・ホールディングス▽ソニーグループ▽ソフトバンク▽富士通▽MIXI▽リコー▽ロート製薬の10社。このほかデロイトトーマツコンサルティングが5億円を学費充当用に高専へ寄付する。
高専は全寮制。寮費についても世帯の年収に応じて奨学金を支給する。
高専の設立を発案し、理事長を務める名刺管理会社「Sansan」(東京)社長の寺田親弘さん(46)はこの日のオンライン会見で、「日本を代表する企業に共感してもらえ、ほっとしている。これからは学生が主役。しっかりと学びを支えていきたい」と語り、「こういったお金の回り方は、国内の諸問題の解決に寄与できるので、はやってほしい」とも話した。