「生活保護は権利」自治体が全世帯に配ったチラシ、なぜ画期的なのか

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永田豊隆

 長引くコロナ禍や物価の高騰の影響で、生活に困る世帯が増えている。そうした人たちに向けて生活保護制度の利用を呼びかけるチラシを作り、すべての家に配った自治体がある。

 この自治体は、日本海に面した人口約5万1900人の京都府京丹後市。昨年8月に地域の自治会を通じて約2万400の全戸に配り、今年2月末から2回目の配布を始めた。

 「生活保護の申請は、国民の権利です」

 昨年配ったA4判1枚のチラシの表にはそう記してある。市職員がパソコンでレイアウトし、かかった費用は印刷費の約7万5千円だった。

 「権利です」を大きく記し、「新型コロナで収入が減った」「小さい子どもがいるので働ける時間が短い」「年金では暮らせない」と、利用を考える具体的な状況を挙げた。

 制度を誤解して申請をあきらめる人もいるため、誤解されがちなポイントを裏面にQ&A形式で解説した。

 「持ち家があると受けられない?」。この問いには、住むための持ち家にはそのまま住み続けられる場合もあることを紹介。「関係が悪い親族にも連絡がいく?」には、DVや虐待がからむ場合は親族に扶養を求めないという原則を明記している。

 2回目のチラシには、生活保護で生活苦を乗り切って就職を果たした人の体験談なども加えた。

チラシ見た人からの相談は

 市民はチラシをどう受け止めたのか。

 市生活福祉課によると、チラ…

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    清川卓史
    (朝日新聞編集委員=社会保障、貧困など)
    2023年3月9日13時0分 投稿
    【視点】

     生活保護を申請しようと窓口を訪れてもチラシもパンフもなく、自治体のウェブサイトを見ても制度の詳しい説明は皆無―。かつては、そうした自治体がむしろ普通でした。制度利用を呼びかけるチラシを全戸配布した京丹後市の取り組みは、まさに画期的なものだ

    …続きを読む