第4回敵基地攻撃能力はなぜ必要なのか? 有識者はどんな議論をしたのか?

有料記事安保の行方 議事録をたどる

田嶋慶彦
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 国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定で、最大の焦点だったのが、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」の保有だった。相手の領域内にあるミサイル発射拠点などを直接攻撃する能力を持てば、戦後の抑制的な防衛政策の大転換になる。政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」ではどんな議論があったのか。

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 敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有など戦後の安全保障政策の大転換に向け、どんな議論が行われたのか。政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」の議事録をたどりながら、議論を検証します。

 議事録によると、昨年9月30日に開かれた初会合で、敵基地攻撃能力を保有する必要があるとの考えを明確にしたのは、読売新聞グループ本社の山口寿一社長だった。「東アジアの軍事バランスが不安定化して、新たな危機の時代に突入した」との認識を表明。防衛力を強化するため、「反撃能力を保有し、継戦能力を高めるといった対象の重点化を図ることが必要だ」と訴えた。

 船橋洋一・元朝日新聞主筆は初会合を欠席したものの、事前に発言要旨を提出し、出席者に配られた。発言要旨には「ミサイルを含む打撃能力(反撃能力)の保有も欠かせない」と記されていた。

 初会合では、厳しい安保環境を訴える意見が相次いだ。黒江哲郎・元防衛事務次官は中国を「我々の最大の脅威」と位置づけ、最も懸念される事態として「中国による台湾に対する武力統一だ」と指摘。「台湾有事において、国と国民をきちんと守れる防衛力をつくる必要がある」と述べた。

 浜田靖一防衛相は防衛力強化について「中途半端なものでは、降りかかる火の粉を払うことはできない」と強調。「そのことはウクライナ侵略が証明している」と付け加えた。

 10月20日の第2回会合。浜田氏は「なぜウクライナが侵略されたのか」と切り出し、こう分析した。

 「ウクライナは十分な防衛力…

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