第8回岐路に立たされ続ける女性 東大副学長が問う、埋め込まれた性別役割
「性別役割的な女性への期待が、いまだに社会の様々な仕組みのなかに埋め込まれています。そのおかしさを言語化し、問い直すことから社会制度を変えていく必要がある」――。本紙「論壇時評」筆者で東京大学大学院教授の林香里さんはそう指摘します。東京大学の理事・副学長としてダイバーシティー推進を担当している林さんに、日本の女性や家族をめぐる問題について聞きました。
【連載】Think Gender 2023 インタビュー
ジェンダー平等で、日本は世界水準から大きく遅れをとっています。それは、私たちの思考や日常にどのような影響をもたらしているのでしょうか。3月8日の国際女性デーに際し、記者が「いま、このテーマを、この人に」と思う相手に話を聞きました。
ダイバーシティーと研究実績 正の相関関係も
――国連によると、「国際女性デー」は女性が達成してきた成果を認識する日だそうです。東京大学は昨年、女性リーダー育成のプロジェクトを発表し、「女性教授と女性准教授計約300人の新規採用」を目指したプログラムが注目を集めました。
女性教員の採用加速プログラムは2016年度からあったのに、大きく語られることはありませんでした。それが今では、文系、理系を問わず、新しい研究プロジェクトを始める時は、女性研究者の採用計画などダイバーシティープランも示さないと予算や評価が得られないようになってきた。だいぶ雰囲気が変わりましたね。これはやっぱりトップが変わったからだと思います。
研究は競争です。論文を書いて業績を上げないといけないので、いつも時間がないんです。そのなかでダイバーシティーについて考えるのは大変だと思う。だからこそ、「研究レベルアップのために女性や外国人や障害のある学生を積極的に受け入れてください」と常に呼びかけ続ける必要がある。世界では、ダイバーシティーのある研究チームの方が論文の引用回数が多いなど、研究実績と正の相関関係も示されているんですよ。
授乳後、麦チョコをむしゃむしゃ食べていたら…
――そうした競争社会のなかで、妊娠・出産をした女性が研究を続けるのは大変なことではないですか。林さんは出産後に大学院に進学されたのですよね。
1991年、長男が1歳のと…
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Think Gender
男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]