羽生結弦さんがおびえたSNSの反応 乗り越え発した芯のある言葉

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聞き手・岩佐友

 フィギュアスケーター羽生結弦さんは、氷上での演技だけでなく、折に触れて紡ぐ言葉の力でも人を引きつけてきた。意識的に言葉を大切にし始めたきっかけは、12年前に自身も地元・仙台で被災した東日本大震災だったという。「言葉を発すること」に、どう向き合ってきたのか。模索しながらの歩みと、今の思いを聞いた。

 ――羽生さんは、目標をはっきり口にしてきました。前人未到だった4回転半ジャンプへの挑戦を「僕の使命」と言い、五輪について「勝たなきゃいけない場所」と話したことも。なぜ、強い言葉を使うのですか。

 「強い言葉は、自分の意思を明確にするツールです。僕は、言葉にすることで頭が整理されることが多い。しゃべっていて、自分はこういうことを考えていたんだなと。ある意味、カウンセリングなんです。自分が認めたくないことも認めざるを得なかったり、『こういう自分になりたい』という思いを投影した言葉が出たり」

 「有言実行しないといけないプレッシャーはあるんですが、だからこそ自分を追い込みきれる。決意表明することで、自分自身を応援できる。それが、実行するための原動力になっていくんです」

羽生結弦さんの魅力とは? 目撃者たちが語る【4月13日まで配信中】

プロ転向後も、羽生結弦さんは意欲的な挑戦を続けています。フィギュアペアのソチ五輪代表、高橋成美さんをお迎えし、長年取材してきた記者、フォトグラファーと3人で羽生さんの素顔について語り合います。申込締切は4月13日(木)21:00まで。

 ――そうして挑んだ後の率直な言葉もまた、結果を超えてファンの心を動かしてきました。4回転半は成功に至らず、メダルにも届かなかった昨年の北京五輪では、「報われない努力だったかもしれないけど、これ以上ないくらい頑張りました」と語っていました。

 「アスリートとして自分の言葉に注目していただく機会、発言する機会が多くありました。演技だけじゃなく、言葉でも『羽生選手でもこういう経験があるんだ』と感じてもらえたのは、よかったなと思えたことの一つです」

 ――これまでの人生で、大事にしている言葉はありますか。

 「『大丈夫』でしょうか。こ…

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この記事を書いた人
岩佐友
スポーツ部|サッカー担当
専門・関心分野
サッカー、フィギュアスケート
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    後藤太輔
    (朝日新聞スポーツ部次長=子ども、社会)
    2023年3月9日11時53分 投稿
    【視点】

     羽生結弦さんの強さの秘密は言葉力にある。担当記者として、五輪2連覇をその過程と共に見てきて、そう感じていました。  けがで2カ月間も氷に乗れず、1カ月半の調整で臨んだ平昌五輪では、きっちり難しいジャンプを成功して連覇を達成しました。

    …続きを読む
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    中川文如
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長)
    2023年3月9日18時54分 投稿
    【視点】

    「大丈夫」の一言をここまで思慮深く考えているなんて……。羽生結弦さんがどれほど言葉を大切にしているのか、伝わってくるインタビューです。 振り返れば、自分の身近にある言葉、しかも何げなく使う言葉に、「大丈夫」と同じように様々な意味を含む

    …続きを読む
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