世界初「母親、父親とも16週」育休、スペイン社会に「劇的な効果」

スペイン エル・ディアリオ

国際女性デーの3月8日から、朝日新聞を含む世界の報道機関14社は、ジェンダー平等社会の実現に向けた特集「#Towards Equality」を展開していきます。NPOスパークニュース(パリ)の呼びかけによるもので、各国のジェンダー平等の取り組みなどに関する記事を、世界で同じ時期に発信します。朝日新聞デジタルでも随時、記事を配信します。今回は、スペインのメディア「エル・ディアリオ」からお届けします。

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 2021年1月1日、スペインは世界で初めて、母親、父親に同じだけの育児休業を与える国になった。16週間で、譲渡はできず、給料は全額支払われる。導入から2年。公式データではほとんどの男性が育休を取っている。育児の責任分担を後押しする可能性を持つものだ。

 社会学者のテレサ・ジュラド氏は、文化的な変化を引き起こす「劇的な効果」があったと考える。「07年に育休の延長に関する議論が決着して以来、社会は、男性が子の世話をしなければならないとの考えを受け入れている」

 男性が育休を取るのは給与が高い場合だけという調査もある。だが、ジュラド氏は変化のインパクトをマクロ経済の数字に反映させるのは早すぎると警鐘を鳴らす。

 すべてが理想的というわけではない。女性が一度で育休を取得する傾向がある一方、男性は分散して取りがちだ。

 経済学者のクリスティーナ・カステラノスセラーノ氏は「男性がパートナーと同時にではなく、パートナーに続いて育休を取得した場合に、育児のあり方はより大きく変わる。男性が全責任を負い、1人で子の面倒を見られるようになり、復職後の力学に影響を及ぼす」と言う。

 社会学者のパコ・アブリル氏はジェンダーと男性像についての研究者だ。民間企業や公的機関にワークショップやトレーニングを行っており、「参加者がいかに男性として社会化されてきたか、育児とは何か、いかに責任を分担するか」について話すという。

 スーパーマーケットの「ソルリ」は、従業員向けにワークショップを開いた企業の一つ。1950人のうち63%が女性だ。「20年以降、産休・育休は非常にバランスが良くなった」と人事担当者は言う。だが、まだ格差は残っており、たとえば時短勤務が認められているのは98%が女性だ。

 ワークショップには、幹部や中堅が参加した。「新しい男性像をもって働くことは、我々の『平等計画』の一部だ」と同社担当者のエスター・ギヨメさん。コミュニケーションが改善され、固定観念がなくなるなど、組織の文化にも変化があったという。

 ワークショップは常にうまくいくわけではなく、アブリル氏は時に相当の抵抗に出くわす。「忍耐強いアプローチが必要で、データを通じて証拠を示さないといけない。だが、不平等や、変化の必要性を理解している非常に心の広い人たちもいる」。世代による変化も感じているという。(スペイン エル・ディアリオ)

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