虹色のしゃべる車が示す復興 県が絵本で伝えたい「かかわり」の意味

宮脇稜平
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 未就学児にも復興教育を進めようと、岩手県絵本を作った。昨年度に続き2作目で、震災発生時に生まれていなかった子どもたちに、いかに伝承していくかを考えた。津波や揺れの被害などは直接描かず、県の復興教育の理念である人との関わりの大切さを届ける内容だ。

 題名は「みんながいるから」。昨年度の1作目と同様に、絵本作家や読み聞かせボランティアなどによる検討委員会で話し合いながら作った。

 主人公は、擬人化された車「カーチン」だ。東日本大震災の発災からわずか3カ月後に営業を始めた同県釜石市のキッチンカーをモデルとしている。

 カーチンは料理が得意だが、恥ずかしがりで自分に自信を持てない。しかし、仮設住宅を訪問したり、暴風雨の中で避難所に駆けつけたりといった経験を通して周囲から感謝されたことで、車体が虹色に輝き出す――というストーリー。

 地域や周囲との関わりを通じて、自己肯定感を高める重要性を伝える狙いがある。

 県は、絵本を小学校から高校まで続く復興教育の入り口と位置づける。1作目も2作目も同じ方向性で、作中では震災を直接的には描かなかった。被害や防災を生々しく伝えることよりも、県が重視する復興教育の「教育的価値」の一つである「かかわる」ことの発信に重きを置いた。

 作中では「ここはね、おおきなつなみでおうちやおみせがながされてしまったんだ」というセリフが出てきたり、暴風雨が描かれたりする。読み聞かせでの活用を想定しており、大人たちが自身の経験も交えながら子どもたちに伝えることも期待しているという。

 県教育委員会の菊池郁聡産業・復興教育課長は「困難を通して成長し、地域の復興や発展のために関わる人を育てたいという思いで作った」と話している。

 絵本はA4サイズで30ページ。今年度内に県内の幼稚園や保育所、図書館など1500カ所に計4万部を配布し、県のホームページでも公開する。(宮脇稜平)

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