ネット上の「神」が望んだ技術者の未来は 映画「Winny」公開へ

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浪間新太

 「天才」「神」――。ネット上でそう呼ばれた一人の技術者が刑事被告人となり、無罪を勝ち取るまでの7年間を描いた映画「Winny(ウィニー)」が10日、全国で一斉公開される。制作者らが今、社会に訴えたいことは何なのか。(浪間新太)

 タイトルは、2002年に東大大学院助手(当時)のプログラマー金子勇さん(13年、42歳で死去)が開発し、ネット上で無償で提供したファイル共有ソフトの名前だ。大容量の音楽などをネット上で無料かつ匿名で送受信できるとして、爆発的に広がった。

 一方、利用者による著作権侵害が社会問題化。ソフトを使ってもらうことで検証や改良につなげようとしていた開発者の金子さんも04年、著作権法違反を手伝った幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕、起訴された。映画では、一審で罰金150万円の有罪判決を受けつつも、11年に最高裁で無罪が確定するまでの金子さんと弁護士たちの闘いが描かれている。

 「ウィニーにより著作権法違反がインターネット上に蔓延(まんえん)することは間違いないと思っていた」

 作品中には、金子さん役を演じる主演の東出昌大さん(35)が取調室で、開発経緯などを「申述書」として記す場面がある。実は、警察官から見本を示されていた。また、憲法が保障する黙秘権を告げずに行われた警察官の取り調べもあった。どちらも、確定判決で認定された事実だ。

 主任弁護人を務めた秋田真志弁護士(59)は「法律の知識がない金子さんに、見立てに沿う供述を強いた。取り調べに依存した捜査を象徴するような出来事だった」と振り返る。

記事の後半では、金子さんとともに闘った弁護士たちの思いや、東出さんのメッセージなども紹介しています。

 実際の尋問調書をもとにせり…

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