飯舘 杉岡誠村長 「ふるさと再生と発展への意欲を大切に」

聞き手・力丸祥子
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 ――村の復興状況は。

 「村は、明日が待ち遠しくなるようなワクワクする楽しいふるさとをめざし、生きがいと生業の力強い再生と発展を掲げている。2024年の運転開始を予定するバイオマス発電所は、村の約75%を占める山林の活用に加え、浜通り全体から(間伐材などの)燃料を供給してもらうので、広域的な復興に貢献する取り組みとして期待できる」

 ――昨年9月、県が敬老の日に合わせて発表した高齢者の割合が高い市町村で県内1位だった。

 「生涯現役の方々が村を支え続けてきた証拠。農村の生活のなかで、いわゆる元気年齢、健康寿命が延びている。高齢化率の高さを嘆くことはない。一方で、若い世代、働き世代、子育て世代が少ないというのは大きな問題。ボリュームアップを図るため、働く場の確保や子育て環境の充実にも力を入れる」

 「自然に囲まれた人間らしい生き方や、村民が一つの大きなファミリーのように暮らしていることに価値を感じる方もいる。都会には都会の魅力がある。価値の統一化は必要なく、私たちの村も含めた様々な選択肢があるべき」

 ――5月ごろ長泥地区で避難指示解除を迎える。

 「長泥地区の方々は12年間も避難を続けたが、植樹祭などで集まり、地区に共通する課題やキーワードを見つけ、自分たちの手でふるさとの再生、発展を成し遂げようとしている。この意欲を村も大切にしたい」

 ――帰還困難区域のうち特定復興再生拠点外で、村が「公園」として利用しようとする地域について、いわゆる「除染なき解除」には賛否両論ある。

 「私のなかで『除染なき解除』だ、という意見はマスコミからしか聞いたことがない。線量低減化の実証など対策が取られた場所を選んでいる。あたかも未除染、何も措置がされていないかのごとく言われることもあるが、違う。除染か除染同等の行為などが行われた場所から、住民との丁寧な協議を経て『公園』として利用することになった」

 ――「ふるさとに戻って暮らしたい」というのが基本ではないのか。拠点外に「住むことはできないが、自由に往来できる」ことは村民にとってどんな意味を持つのか。

 「故郷に戻って、元の生活をしたいというのは基本だ。しかし、村民は長期避難のなかで、除染が終わった場所で草刈りや花植えをするため、人によっては1時間以上かけて通いながら村に関わり続けている。開拓の魂がある。できることからやる中で、新しい未来が切り開かれている」

 ――全村避難を経験した自治体の長として伝えたいことは。

 「震災や原発事故で図らずも生まれた村の今の状況は、少子高齢化の面で見ると日本の縮図だと思う。全国の自治体が5年後、10年後に直面するかもしれない状況をいち早く経験している。復興だけでなく、少子高齢化に対して、決して諦めずに取り組む姿を、同様の課題を真剣に考えている多くの自治体と共有していきたい」(聞き手・力丸祥子)

     ◇

 県が2022年9月に発表した統計では、飯舘村の高齢化率は68・6%で、金山町(61・9%)、昭和村(55・4%)を超えて最も高い。今春に避難指示が解除予定の長泥地区の特定復興再生拠点には、63世帯200人(昨年8月1日時点)が住民登録している。

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