豊島将之九段「希望持てる時間が増えたら」 涙を拭いた少年、名人へ
将棋の豊島将之九段(32)は2日午前、静岡市葵区で始まった第81期名人戦・A級順位戦の最終一斉対局で佐藤天彦九段(35)との一局に臨んでいる。史上最年少で棋士養成機関に入会し、平成生まれ初の棋士になり、令和初の名人にもなった人。絶大な声援を受ける棋士の素顔をロングインタビューで追った。
――タイトル戦で藤井さんに勝つ、ということは、これから成さなくてはならない達成なのではないか、と端からは思ってしまいます。
「藤井さんというすごい人が出てきたので、まだ自分にも可能性があるならばまた対戦したいと思います。藤井さんと指して勝つということを先の目標として考えないわけではないですけど、とにかく今は藤井さんにどうこう、とか言えるようなレベルの将棋を指せていないので。内容も結果も伴って、自分に確信が持てれば少し違ってくるのかもしれません。今はまだ全然できていないですけど、やっていることがうまくいけば、またそんなふうになれるのかもしれない」
――ちょうど一回り下の藤井さんと戦っていく上で、今の年齢についてはどのようにお考えなのでしょうか。
「自分のピークは25歳から35歳のどこかに来ると思ってきました。今より20代後半の方がいろんなバランスが良かったとは思いますけど、まだ可能性のある年齢だとは思っています。経験は増えてきましたので、直感や大局観を磨いていく方法はあるのかなと。プライベートですか……? 結婚を考える年齢にはなっているんでしょうけど、考えたことないんですよね……ハハハ」
――少し包括的なことも聞かせて下さい。棋士が持つ「才能」について、どのように考えているのでしょうか。
「自分の場合は明らかに才能はないです。でも、努力でもなくて、人や運に恵まれてきました。才能がある方ではない、ということが奨励会時代は分かっていなかった。タイトル戦やA級のような場所で戦うようになってからは、周りの人より自分に才能があるとは全く思えないです。上のレベルに行くに従って、分かるようになりました」
――将棋を指す上での「闘志」は必要だとお考えでしょうか。
「自分の場合、最初にタイト…