「誰かのために、ともす」月命日に福島で キャンドル・ジュンさん

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滝口信之
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 アーティストのキャンドル・ジュンさん(49)は、東日本大震災があった2011年以降、月命日に福島県内でキャンドルをともしてきた。震災前は、広島や長崎、さらには米同時多発テロ後のニューヨークなど国内外問わずに訪れた。共通するのは「悲しみの場所を喜びの場所に変えたい」という思いからだ。(滝口信之)

「悲しみの場所を喜びの場所に」

 東日本大震災から11年11カ月の月命日だった2月11日、福島県楢葉(ならは)町で主催したイベント会場に、自身が制作したキャンドル100本ほどが並び、東京電力福島第一原発周辺から避難した人らが集まった。一人一人の声に耳を傾け、子どもたちと追いかけっこして遊ぶ姿があった。

1974年、長野県松本市生まれ。94年からキャンドル制作を始め、2011年の東日本大震災発生以降、月命日には福島県内各地をめぐり、キャンドルをともしてきた。

 バイオリン製作者の父を持ち、幼い頃から工房で遊び、物作りの楽しみを覚えた。高校卒業後、アーティストを志し、絵画や音楽などの制作に取り組むうち、キャンドルにたどり着いた。火をつけると命が宿され、消えていく姿が人間に似ていると思った。

 1994年から制作を始め、キャンドルで空間を演出する「キャンドルアート」という独自の分野を確立する。2001年、広島で開かれたイベントで、原爆の残り火「平和の火」を使ってキャンドルをともした。この経験が転機になり、長崎や沖縄でも戦争経験者の声を聞き、犠牲になった人への鎮魂の火をともすように。それは、かつてそこで何が起きたのかを知ろうとする旅、自分のためにともしていたキャンドルが「誰かのためのキャンドル」へと変わっていく旅でもあった。

記事の後半では、各地でキャンドルをともすようになった理由を紹介しています。

 米同時多発テロ後にはニュー…

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