増える風力発電開発に対応 環境アセス第1段階のガイドライン策定

宮脇稜平
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 岩手県内での風力発電事業の開発で、イヌワシなどの貴重な自然生物への悪影響が懸念される計画が相次いだことを受け、県は新年度から、環境影響評価環境アセスメント)の第1段階である「配慮書」についてのガイドラインを設ける。事業者側に対して環境保全に配慮するよう求めるもので、風力発電の配慮書に特化した指針は全国初という。

 配慮書は、事業者が計画立案の段階で、事業の規模や立地場所などについて、環境に配慮すべきことを様々な意見を採り入れて検討し、まとめるもの。環境アセスの手続きの中で初期に行うべきものと位置づけられ、この作成にガイドラインを設けることで事業者側に環境への配慮を促す狙いがある。

 県環境保全課によると、再生可能エネルギーを推進する国の方針により、近年、風力発電事業に関する環境アセスの手続きが県内で増加している。2022年度は過去最多の8事業の届け出があった。

 一方で、自然生物や景観に配慮が不十分な計画も見られるという。8事業のうち、盛岡市薮川周辺や大船渡市陸前高田市周辺などの計3事業で、計画の再検討を求める知事意見が出された。同課の阿部茂・環境影響評価担当課長は「意見が連続して出されるのは珍しく、特異だ」と話す。

 国のガイドラインは多岐にわたる上、現時点で、風力発電計画の配慮書に特化した指針はないという。また、県特有の生物への配慮に関する情報量も不十分だった。そこで県は、独自のガイドラインの作成に着手。専門家の意見も踏まえながら、環境省などの指針を整理した上で、まとめた。4月1日以降に提出された計画に対して適用していく。

 ガイドラインは事業者に義務を課すものではないが、複数の事業案を用意する必要性や、騒音の影響の測り方といった、配慮書を作る際に気をつけるべき点をまとめている。

 80項目のチェックリストもあり、「(イヌワシなどの鳥類について)専門家のヒアリングを行い、その結果を記載しているか」「地域の重要な景観がある場合、風車を想定したフォトモンタージュによる景観の予想が整理されているか」などを確認できる。

 阿部担当課長は、事業を見直すリスクが減ることで、事業者にとっても利点があると説明する。「より環境保全に配慮し、地域との共生も図られる風力発電が進んでいくのではないか」とみている。(宮脇稜平)

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