本屋ない市町村、全国で26% 業界はネット書店規制を要望、懸念も

宮田裕介
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 全国で書店が次々に姿を消している。出版文化産業振興財団(JPIC)の調査によると、書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村は全国で26・2%にのぼる。「書店文化を守るため」として、ネット書店の規制など国による支援の検討も始まった。だが、そうした方向性に疑問の声もある。

 調査によると、書店がないのは全国1741市区町村のうち456市町村。都道府県別で書店がない市区町村の割合は、沖縄が56・1%と最も高く、長野の51・9%、奈良の51・3%と続いた。4割を超えたのは、福島(47・5%)、熊本(44・4%)、高知(44・1%)、北海道(42・5%)。一方、広島、香川の両県は全市町村に書店があった。

 調査対象は、大手取次会社を経由して販売契約している新刊書店の数で、「独立系書店」などと呼ばれる大手取次を利用していない書店、ブックカフェ、ネット書店、古書店などは数に含まれていない。調査方法が違うため単純比較はできないが、取次・トーハンが2017年に調査した際は22・2%だった。

 市区町村別ごとでみると、書店がない市は792市のうち17(2%)だったのに対し、町は743町のうち277(37%)、村は183村のうち162(89%)だった。東京23区は全てにあった。書店がない市町村がどこかは明らかにしていない。

 書店経営が厳しい背景には、人口減少や雑誌の売り上げの急減、ネット書店で本を買う人の増加など様々な要因がある。

 日本書店商業組合連合会の加盟店などの書店業界は、自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」に支援を要望。今春までに提言書をとりまとめ、具体的な支援の検討を始める。

 具体策としてあがるのが、アマゾンなどのネット書店との競争環境の整備だ。本は、定価販売の根拠となる「再販制度」があるが、ネット書店では、送料無料やポイント還元で「実質的に値引きが行われている」とし、一定の制限やルールを設けることを検討する、とした。

 そのほか、公立図書館で同じ本をたくさん仕入れないようルールを定めること、出版物への軽減税率の適用、読書推進を目的としたクーポン券の配布なども検討材料になっている。

 だが、ネット書店や図書館への規制は、読者の利益を損なうことにつながりかねず、批判も多い。また、特定の政党の議連に要望していることについて、政治との距離の取り方への疑問の声もある。宮田裕介

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