ウクライナ侵攻に駆り立てた 権力者プーチンの破局的な時間観念

有料記事

池田嘉郎さん(寄稿) ロシア史研究者

1971年生まれ。東京大准教授。専門は近現代ロシア史。著書に「ロシア革命 破局の8か月」など。訳書に「プーチンと甦(よみがえ)るロシア」。

 ロシアのウクライナ侵攻から1年が過ぎたが、今でもプーチン大統領がなぜあのタイミングで侵攻に踏み切ったかはわからない。

 ただ、当時69歳のプーチンが、老いを気にしていたことはありうるだろう。ロシア取材の長い記者によれば、少なくとも腹心には、今を逃せば決断のチャンスは失われてしまうという懸念があったようだ(2022年11月3日、英タイムズ・オンライン版)。

 権力者の健康や年齢はどの国でも政治に影響を与えるが、ロシアではそれは特別な意味をもつ。

 直接的には、権力者を制約する仕組みがロシアでは弱いからである。だがそれは、政権によるメディアの統制や反政府勢力の締め付けといった、権力政治の次元だけで論じられることではない。

権力者はルールをつくり、やぶる

 いまやらねば全てが失われ…

この記事は有料記事です。残り3900文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません