やぶる絵本、長湯できる小説… 京都の小さな出版社が込めた思い

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向井大輔
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 「さりげなく」。そんな名前の小さな出版社を2019年に立ち上げた。稲垣佳乃子さんが25歳の時だ。「作品の内容と装丁がちぐはぐにならず、作家の魅力がにじみ出るような本作り」を心がけ、10冊以上の個性豊かな本を生み出してきた。

 例えば、作家モノ・ホーミーさんの「するべきことは何ひとつ」は、「長湯文庫」と銘打つシリーズの第1弾。お風呂で本を読むのが好きだけど、紙が湿気で曲がったり、油断して湯船にちゃぽんとつけてしまったり。そんな自身の経験から、撥水性の紙を使った本に仕立てた。内容も、長湯の時間調整がしやすいよう短編小説が中心だ。

 「居心地のわるい泡」(平田基さん著)は、函に入った仕様に。持ち運ぶというよりもベッド横に置き、毎晩1編ずつ物語に入っていけるようにというイメージからだ。「喫茶で読むなら軽めのエッセー、電車移動で読むから旅の本、寝る前に読みたくなる詩の本。本は形や重さ、内容によって読む場所を選べるものだし、そこが面白さでもあると思います」

 創業のきっかけは、作家仲西森奈さんの短歌を読んで、「びびび!と体がしびれ、心に刺さった。これは本を作るしかない!」と思ったこと。自費出版ではなく、より作家が活躍できる場として、出版社を立ち上げ、歌集「起こさないでください」を出した。

 神戸市出身だが、なぜ京都で…

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