本の学校から 本屋大賞ノミネート作品から話題のミステリー3作

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今井書店 浜崎広江さん

 今年1月、本屋大賞のノミネート10作品が発表された。その中に、昨年ミステリー界を騒がせた3作品がある。夕木春央著「方舟(はこぶね)」(講談社)、呉勝浩著「爆弾」(同)、結城真一郎著「#真相をお話しします」(新潮社)だ。いずれも昨年末に発表された各ミステリーランキング上位に食い込んでいる。

 「方舟」は「週刊文春ミステリーベスト10」2022国内部門と、「MRC大賞2022」のランキングで1位を獲得。SNS上では「ネタバレ厳禁」コメントが多数あがった話題作。

 奥深い山中に立つ「方舟」を模した地下施設を訪れた10人の男女が、地震で落石した岩で出口をふさがれ閉じ込められてしまう。建物内には水が流れ込み、その建物が水没するタイムリミットは1週間。助かる方法はひとつだけ。誰か1人が犠牲になること。そんな極限状態の中で殺人事件が発生する。

 特殊なクローズドサークルに哲学的トロッコ問題を絡めた設定で、犯人当てと謎解きという本格ミステリーの面白さを存分に味わえるうえ、これまでのクローズドサークルミステリーにはない大仕掛けが施されている。これを読んだらあまりの衝撃に絶句すること間違いなしだ。

 「爆弾」は「このミステリーがすごい! 2023年版」国内部門と「ミステリが読みたい! 2023年版」国内部門のランキングで1位に輝いた警察ミステリー。

 ささいな事件を起こし警察で事情聴取された男が、取り調べ中に爆破事件を予告。そしてその通りに事件は起こった。スズキタゴサクというふざけた名前で自虐的持論を展開する不気味な男。爆破の手がかりは男が出題する「クイズ」のみ。限られたヒントから必死に答えを読み解く捜査官たち。取調官と男との緊迫した心理戦、そして頭脳戦にページをめくる手が止まらない。事件解決に奮闘する警察官たちの闘いが圧倒的臨場感をもって描かれている。

 「#真相をお話しします」は「週刊文春ミステリーベスト10」2022国内部門3位のミステリー短編集だ。昨年の夏ごろにテレビの情報番組で紹介され、いっきに注目が高まった。

 家庭教師斡旋(あっせん)の親子面談、マッチングアプリ、精子提供、リモート飲み会、YouTubeなど現代日本社会の日常のワンシーンを切り取り、そこに緻密(ちみつ)で多彩な謎を仕掛けた。日常の何げない出来事がテーマだからこそ、身近に起こるかもしれないと思わせるリアル感がすごい。短編だからこそ出来る謎の仕掛けとその真相に驚かされる。

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