第1回なぜ東京で? 農地3千平方メートル借りた29歳の夢と貸し手の事情
え? 東京で農業ができるの?
読み終えて、そう思った。農家出身ではない女性が、東京都内で農地を借りて農場を始めたというネット記事。2016年のことだった。
鈴木茜(あかね)さん(29)は当時、今後の身の振り方を考えていた。熊本県内の農業法人に就職し、あこがれた「生産者」の一員になったのもつかの間、最大震度7の熊本地震で被災。勤め先の農園が閉園になっていた。
農地の少ない東京で?
そもそも、農地ってどうやって借りるの?
尽きない疑問の一方で、ある思いが浮かんだ。
東京なら、自分が志したような農業をやれるかもしれない――。
新たな挑戦が始まった。
連載「東京で農業はじめました」はこちらから
農家出身ではないのに、独立して農業を始める人が都内で増えています。広い農地は望めず、人を雇うのも、作業用施設を持つのも高くつきます。それでも、東京で始めるのはなぜなのでしょうか。
鈴木さんは神奈川県出身。父親はIT会社員、母親は保険外交員という家庭で育った。
中学時代、ささいなきっかけから不登校になった。
クラスの雰囲気になじめず、自室にこもった。摂食障害に陥り、「激やせ」も経験した。
そんな時期に一冊の本と出会…
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- 【視点】
都市の農地は長らく、宅地化すべきものと位置づけられ、農政で都市農業は顧みられることがありませんでした。2015年施行の都市農業振興基本法により、この流れが変わりました。この法律では、農地を「都市にあるべきもの」と位置づけ、農業の安定的な継続
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