那須特別支援学校の寄宿舎廃止議論、地元4市町トップはどう捉える?

小野智美
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 県教育委員会が主導する那須、栃木両特別支援学校寄宿舎の廃止の議論を、地元の行政トップはどう捉えているのか。那須特別支援学校の通学区域である4市町の教育長と市長、町長にただした。

 4人の教育長には昨年10月の定例会見で見解を尋ねた。矢板市の村上雅之、那須塩原市の月井祐二、那須町の平久井好一の3氏は判断を留保する回答だった。大田原市の篠山充氏のみが明確な考えを述べた=表。

 篠山氏は会見後の12月の市議会で、保護者の意向を確認したうえで、阿久沢真理・県教育長に「子どもたちのために存続を検討していただきたい」と求めたことも明らかにした。

 4市町の行政トップの考えはどうか。昨年12月に阿久沢県教育長が廃止時期の延期を表明して以降の会見で同様に見解を聞いた。

 那須塩原市の渡辺美知太郎市長は保護者の存続の要望について「私にはそういった声は届いていないのでコメントできない」と回答。会見後の取材に対し「県の話で県が判断する。市が言ったところで仕方がない」と話した。

 那須町の平山幸宏町長は「ぜひ残したいという話は保護者から聞いている」としつつ、「県の寄宿舎なので対応は県に委ねる」。

 大田原市の相馬憲一市長は「県教委が判断し、結論を出すと考えている」と述べた。矢板市の斎藤淳一郎市長は「(寄宿舎の廃止は)老朽化が非常に大きい(理由だ)と思う。集約化・複合化がはかられるなかでの判断だと受け止めている」とし、廃止への対応は「市の所管分野でしっかり取り組んでいく」と話した。(小野智美)

4市町の教育長の見解(昨年10月)

大田原市 ぜひ存続をお願いしたいと思っている。

矢板市 県の説明を受けていないので、どう判断したらいいか、見解を持っていない。

那須塩原市 県の教育行政なのでコメントは控えたい。

那須町 県の施設についてとやかく言える立場にないので、見解は控えたい。

     ◇

 藤井克徳・NPO法人日本障害者協議会代表の話 この問題への対応は、教育行政の成熟度をはかるバロメーターとして見るべきだ。当事者抜きで拙速に廃止することになれば、それが前例となり、他県にも影響しかねない。

 背景には財政事情があるのだろうが、教育行政に単純に財政論を持ち込むのは危うい。子どもたちが長いバス通学に耐えられるとは思えず、人格形成期の生活訓練や自立能力の獲得の方法として寄宿舎に代わるものがあるとも思えない。

 気になるのは、今回の検討に当事者や保護者がどれくらい関わっているのかという点だ。日本も批准した障害者権利条約は、その審議の過程に障害者自身が深く関与した。当事者の参加が条約の価値を高めたとも言える。寄宿舎廃止は当事者には重大な問題であり、一方的な決定は国際的な潮流にも相いれない。

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