ランサムウェア被害、前年比57%増 欠陥を探る不審アクセスも増加

編集委員・吉田伸八
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 パソコンなどのデータを暗号化して使えなくし、復元と引き換えに身代金を要求するコンピューターウイルス「ランサムウェア」の被害を受けたとの申告が昨年、全国の警察に230件寄せられた。前年より84件(57・5%)増えている。警察庁が2日発表した。

 警察庁はランサムウェアによるサイバー攻撃が目立ってきた2020年の途中から被害の集計を開始。20年下半期が21件、21年の上半期61件、下半期85件、昨年の上半期114件、下半期116件と増え続けている。警察庁は「攻撃は引き続き活発に行われている」とみる。

 昨年の被害も企業や団体の規模を問わず出ているという。社外から社内ネットワークに接続するVPN機器や、職場のパソコンを遠隔で操作するリモートデスクトップから侵入されるケースが引き続き目立つ。警察庁は、パソコンのOSやVPN機器を最新なものに更新するなど、システムの脆弱(ぜいじゃく)性を埋める対策をとるよう呼びかけている。

 昨年は、トヨタ自動車グループのデンソーやトヨタ取引先の小島プレス工業といった自動車産業や、病院、大学などでの被害が明らかになった。昨年10月に攻撃を受けた大阪急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)では、患者の電子カルテの使用や診療報酬の計算ができなくなり、緊急以外の手術や外来診療の停止に追い込まれた。名古屋大と岐阜大を運営する東海国立大学機構などの被害も判明している。

 一方、警察庁の観測で把握される、システムの欠陥を探る不審なアクセスの数も増加し続けている。昨年は、センサー1カ所あたり1日7707・9件で過去最多を更新した。5年前の4倍に増えている。(編集委員・吉田伸八

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