信頼性と説得力のある、普遍的な人権外交 そのために必要なものとは

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聞き手・桜井泉
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 人権という普遍的価値の実現を目指す人権外交は、相手国によって対応の仕方を変えるなど、国際社会でしばしば恣意(しい)的に使われてきた。日本も本格的な人権外交に乗り出す中、信頼性と説得力のある外交とは。国際政治学者の市原麻衣子さんに聞いた。

 人権は第2次世界大戦後に著しく発達した国際規範です。1948年、国連総会世界人権宣言が採択されました。そこにはナチスドイツによる迫害など深刻な人権侵害への反省がありました。市民の自由権から社会権、マイノリティーなど特定集団の人権保護規定なども培われ、国際法が整えられました。人権は人類の普遍的価値として共有され、人権侵害へのハードルが高まったのです。

自由主義的な価値観の弱体化

 ところが過去15年ほどの間に世界では人権を軸とした自由主義的な価値観が弱体化し、言論、報道、信教の自由などが侵害されるケースが一気に増えています。国内でポピュリストの指導者が台頭し、SNSなどの技術革新も進み、人権抑圧の道具として使われているのです。またロシアや中国など権威主義国は、民主主義社会の開放性につけ込んで宣伝や偽情報を拡散し、架空のネット世論をつくっています。

 人権という価値の実現を目指すのが人権外交ですが、しばしば恣意(しい)的に使われてきました。冷戦期には西側先進国が、政治、経済的に重要でない国に人権侵害を理由に圧力をかけた一方、大国や地政学的に重要な国には口出ししない。例えば米国は、冷戦の最前線となった反共国家の人権侵害に目をつぶりました。

 今、国際社会が最も憂慮する…

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