竹島のアシカを肥料として利用 研究者「竹島は島根の経済圏だった」

石川和彦
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 日韓が領有権を争う竹島(島根県隠岐の島町、韓国名・独島)で捕獲されたアシカの肉が、島根県出雲市大社町で藍染めの原料「葉藍」栽培の肥料として使われていた可能性が高いことが、分かった。島根大の舩杉力修(ふなすぎりきのぶ)准教授(52)らが24日に発表した。舩杉准教授は「竹島は島根の経済圏の中にあり、島根県への編入前から日本領だったことを補強するもの」としている。

 舩杉准教授らは2018年度から、日本国際問題研究所の依頼を受け、1905(明治38)年の島根県編入前後における竹島の漁業の実態を調査・研究している。すでに弓ケ浜半島(鳥取県)での綿栽培でも竹島のアシカの肉が肥料として使われた可能性が高いことが分かっている。

 発表によると、乱獲防止のために竹島でのアシカ猟に許可制を導入した島根県の文書「竹島貸下(かしさげ)・海驢(あしか)漁業書類」(1905~08年)が県公文書センターに保管されていたという。その中に猟を希望する人の名前と、過去の漁業実績や販売先などの記載があった。

 販売先の一つが「杵築(現在の出雲市大社町) 渡辺豊次」だった。1911年末現在の県内主要商工業者を記した「島根県商工人名録 第3回」などから、染め物業者の渡部豊次郎と特定。豊次郎が染め物業を始めたのは1885年だったことも分かり、子孫の渡部豊市氏(85)=同町北荒木=に2021年に聞き取り調査をした。

 捕獲されたアシカはその場で皮をはがされ、肉は塩漬けにして肥料として出荷されたことが記録に残っている。また当時、動物性肥料は米作りにほとんど使われず、第4回内国勧業博覧会(1895年)の島根県からの葉藍出品者などから染め物業者が葉藍を生産していたことも確認できた。

 これらのことから舩杉准教授らは、豊次郎がアシカ肉を肥料にして葉藍を作っていた可能性が高いと結論づけた。(石川和彦)

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