線路は続くよどこまでも…安部若菜と松岡さくらの果てなきアイドル旅
NMB48のレッツ・スタディー!経済編⑬ 鉄道と経済
人気投資漫画「インベスターZ」にNMB48メンバーが入り込み、経済知識や理解を深める「NMB48のレッツ・スタディー!」経済編。NMB48の安部若菜さん(21)と松岡さくらさん(19)が「インベスターZ」の登場人物たちと一緒に「お金と経済」について考えます。
自宅と仕事場を鉄道で直結させる!?…松岡さくらさんの夢想
松岡さくら「若菜さん、鉄道を敷くのってどれくらいお金がかかるんですか?」
安部若菜「いきなりどうしたの?」
松岡「私の家と大学、そしてNMB48劇場を結ぶ鉄道を敷けないかと夢想していて」
財前孝史(道塾学園投資部員)「何それ!?」
神代圭介(投資部主将)「鉄道王か何かをめざしてるの?」
松岡「違います。アイドルを極めるためです。今の私には1分1秒でもレッスン時間がほしいんです。移動時間を短縮したいの。その分をレッスンにあてられるでしょ」
財前「なんでそんなに練習したいの?」
松岡「アイドルとしてもっとパフォーマンス力をつけたいってことと、『チームN』の公演にもまたぎ出演したいからです」
財前「またぎ出演って何?」
レッスンの時間をたくさん確保したい!
安部「自分の所属チームとは別のチームの公演に出て歌ったり踊ったりすることです。さくらちゃんは今、若手中心の『チームBⅡ』というチームに所属しているんですけど、『チームN』はベテランがそろっていて、パフォーマンス力に定評のある『フラッグシップ』チームなんです」
神代「その分、求められる水準も高いと」
松岡「あこがれのチームなんです」
財前「車で移動するんじゃだめなの?」
松岡「私、運転とか向いてない気がするんで、車を運転する予定はないんです。自転車は乗れないし、長距離バスには酔うこともあるので、移動手段は実質、鉄道だけ」
安部「だからおうちの前に鉄道を敷きたいの? ふふ、かわいい夢だなあ」
松岡「そういうのありませんか?」
大阪・淡路島・四国を鉄道で直結!?(安部若菜さん)
安部「ん~。そうだな。私、四国にときどき旅行に行くんですよ。さぬきうどんが好きでさ。でも、大阪から最短距離で四国に行ける鉄道がないのが不便で。だから、私なら大阪・淡路島・四国を直接結ぶ鉄道を敷くね」
財前「ははは。2人とも、採算も考えずに夢物語ばっかり……」
神代「目の前の採算だけで判断する経営者ばかりだったら、日本の鉄道網はここまで発展していない。夢物語は大事だ」
財前「え……」
神代「明治末、阪急電鉄創業者の小林一三が紅葉の名所である大阪・箕面や温泉地である神戸・有馬と梅田との間を結ぶ鉄道を構想していたころは、世間的にはもうけが見込みづらい路線とみられていた」
財前「あ、その逸話は知っています。当時の鉄道は大都市間を結ぶものと考えられていて、多くが開業には消極的だったと……」
安部「当時の沿線予定地はのどかな田園風景だったらしいもんね。でも小林一三は、人口増加で大阪市内の住宅事情が悪化するなか、郊外の沿線一帯に住宅地をつくって新住民を呼び込み、その人たちに電車を利用してもらう戦略を打ち出したのよね」
神代「そう。のちに実現する、ターミナル駅に百貨店をつくる構想なども画期的だった。こうした経営は、その後、多くの私鉄に『成功のひな型』を与えることになった」
松岡「乗客が少ないなら、乗る人をつくり出そう、という発想か。すごいですね」
IRの先駆け? 阪急創業者・小林一三が武器にした「言葉の力」
神代「とはいえ、最初からそうした斬新な構想を皆が理解してくれたわけじゃない」
安部「それはそうよね」
神代「出資者に事業を説明する武器となったのが、『最も有望なる電車』(1908年)という小冊子といわれている。そこで鉄道の意義や経営戦略をわかりやすく書いたんだ」
安部「え~っ、IR(投資家向け広報)の先駆けじゃない?」
松岡「小林一三って、もともとは文学青年だったんですよね。若いころに小説も書いたそうですよ。文学青年の経験が、こういうアイデアに生きているのかも知れないですね」
安部「えっ、若いころに小説を! 私と同じだ。小説『アイドル失格』を去年11月に出したばかりの私と……。だったら私にも鉄道事業の才覚が眠ってるかな?」
財前「そ、それは強引すぎるかと……」
神代「でも、実業家に大事なのは、周りの人たちの心を動かす力、つまりは『言葉の力』だということを考えさせられるエピソードではあるね」
安部「もし私が鉄道を敷けるなら、ころんとした形のかわいい車両を走らせて。車内をお座敷ふうにつくって、そこでアイドルの公演をするの。ファンと一緒に旅行気分を味わいながらの2時間。どうかな」
松岡「公演列車! いいですね! 私が鉄道会社を経営できるなら……。例えば駅ナカに保育園を設けるなどの取り組みをいっそう広げて、そこに皆が住みたくなるような仕掛けを考えてみたいですね。私の両親が共働きで、子ども心に『そういう場所が増えると両親は便利そうだな』と思っていたので」
財前「いろんなアイデアが湧くもんだね」
神代「実際、地方の路線は維持が難しくなっているところもある。奇想天外なように思える発想の中にも、利用促進に生かせるヒントが案外含まれているかもしれない」
駅や路線の命名権があれば…自分の名前をつける? つけない?
松岡「万が一、最寄りの電車路線が廃止されたら、私、生活していけない……」
安部「私も電車派なのですごく困るよ」
松岡「同じような思いをしている人が、廃線になった鉄道の沿線にもきっといると思うんです。だから私、地方鉄道の収益向上策を思いついたそばから書きためていて」
安部「えっ!」
松岡「その中の一つが『命名権』。個人や企業がお金を出して、路線や駅に好きな名称をつけられるという案なんですけど」
神代「地方私鉄で、同じような取り組みをしているところは既にあるけどね」
松岡「なあんだ」
安部「でも、いい案ね。さくらちゃんが命名権を買えたら、どんな名称にするの?」
松岡「私の愛称をつけますね。『さくぱん線』とか『まつさく駅』とか……」
安部「自分の名前つけるの? 意外……」
松岡「意外ですか? 私の名前を乗客のみなさんに覚えてほしいじゃないですか」
安部「私はそういうの恥ずかしい」
松岡「あら……」
安部「でも、『さくぱん線』。かわいい響きでいいじゃない。電車のヘッドマークに、さくらちゃんの似顔絵を描いたらどう?」
松岡「それは恥ずかしいです」
安部「線引きがよくわからない……」
本業以外で「稼ぐ」戦略もカギに… 宮宇地准教授のワンポイント解説
追手門学院大の宮宇地俊岳・准教授が各回のカギとなる経済用語を解説します。
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客や貨物の輸送を担う鉄道は、交通インフラストラクチャーとして、我々の生活に深く根付いています。いったいどのような経済効果をもたらしているのでしょうか。
まず、鉄道のビジネスモデルについて考えてみましょう。鉄道事業は、ただ鉄道を開通するだけでは十分にもうけることができません。鉄道の利用者数(利用機会)を増やさなければ大きな収益が見込めないビジネスです。
そのため、鉄道会社やそのグループ企業は、沿線の住宅開発を行い鉄道沿線の居住者を増やし、さらには駅前の土地開発や駅の施設自体の利便性を向上させることに取り組む不動産事業を展開することがあります。また、路線の都心側の終着駅に百貨店や映画館・劇場などを展開し、他方の郊外の終着駅には動物園や遊園地などの娯楽施設や野球場(と球団)を設置したり、あるいは温泉などの観光地を路線の終点とすることで鉄道利用の機会を増やしたりする戦略をとることもあります。
人の往来の多い港や空港など…
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