反則負けからの出発「気持ちが軽く」 将棋棋士・千田翔太の描く未来

将棋の千田翔太七段(28)は昨年12月の対局で自らの手番を間違えて反則負けとなる苦渋の経験をした。2013年のデビュー以来、高勝率を誇ってきた俊英だが、今期は10勝14敗(11日現在)と低迷する。AI研究の先駆者は今、何を思いながら戦っているのだろうか。12日、第81期名人戦・B級1組順位戦の羽生善治九段(52)戦が出発の一局になる。

 午前10時に始まり、深夜まで続き、時には日付を越えてから真の勝負を迎えるのが順位戦だが、あの対局は午前10時1分に終局した。

 千田翔太は昨年12月22日、第81期名人戦・B級1組順位戦9戦目で近藤誠也七段との勝負に臨んだ。事前に後手と決まっていたが、記録係の合図の後に初手を指してしまい、反則負けとなった。

 棋士にとって間違いなく重い出来事だが、直後の千田は取り乱すような様子もなく、主催紙記者である私の取材に応じ「申し訳ありません」と頭を下げながら終始冷静な口調で説明した。

 「対局のかなり前の段階から先手と勘違いして準備をしていました。棋譜用紙や記録係の開始合図で気付くこともできたと思いますが、盤面に集中してしまっていました。対局相手である近藤さん、応援して下さるファンの皆様、主催者に大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。棋士として対局を楽しみにしていたので、自分のミスで指すことができなかったことを大変残念に思います」

 年明け4日、年初の取材会で千田に話を聞く機会があった。「調子を落としているので、各棋戦で勝ち上がっていた頃の水準にひとまずは戻せるように」。明るい様子で語った後、不調の要因について問われると、意味深な言葉を発した。

 「今後どのような道筋で将棋…

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