ブラジルの首都ブラジリアで8日、右派のボルソナーロ前大統領が敗れた昨年の大統領選に「不正があった」などと訴えるデモ参加者ら数千人が暴徒化し、大統領府や国会議事堂、最高裁判所に侵入しました。ボルソナーロ氏は在任時から、選挙の電子投票の「不正」を根拠を示さずに主張。その訴えに共鳴した支持者らが、今回の事件を起こしたとみられています。今回の暴動は、米国のトランプ前大統領の支持者らによる2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件との類似性も注目されています。
なぜ、このような事態に陥ったのか。ブラジル国内外への影響はあるのか。ブラジル政治に詳しい東京外国語大学講師の舛方周一郎さんに聞きました。
――今回の暴動の一報を聞き、どう受け止めましたか。
相当、驚きました。でも実は、起こる兆候はありました。昨年10月の大統領選が終わった後に、さらにいえば1年以上前から米国の議会襲撃事件をなぞり「1月6日」にこのような事件が起こる可能性があるという情報を政府筋が入手し、警戒感を示していました。12月には、反民主主義的なデモの関与者に対する一斉捜査もありました。あくまで計画段階だったものが、まさに今回起きてしまった。政府側も準備不足だったと思います。
――暴徒化した人たちが訴えたかったことは何なのでしょうか。
まずは「選挙の不正」というのが一つだと思います。ボルソナーロ氏は昨年の大統領選で「憲法には従う」という立場で、一応の決着をつけました。ただ、選挙結果に関しては認めておらず、1月1日の左派のルラ大統領の就任時も、本来であれば政権交代をするときに前大統領が新大統領へたすきを渡すという象徴的な出来事があるはずなのですが、それも嫌がりました。
ルラ氏が政権を担うことに対して反発する気持ちも根強く残っています。ボルソナーロ氏の支持者らは、ルラ氏が政権を担うということ自体が「民主主義に反していることだ」と思っている。「選挙は不正に行われているし、ルラ氏を含めこれまで汚職をしてきた人たちが政権をとってしまった」ということが民主主義に反していると思っているのだと思います。
米議会襲撃事件との違いは
――ボルソナーロ氏にも疑惑はありますよね。
ボルソナーロ氏はあくまでま…
【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら