「へいわの島」にミサイル部隊 戦略家を気取る前に読むべき絵本
沖縄季評 山本章子・琉球大学准教授
1歳半の子供は絵本が好きで、朝晩、本棚から読んでほしい本を次々と引っ張り出してくる。最近のお気に入りは「へいわってすてきだね」(ブロンズ新社)で毎日のように読みきかせをせがむ。沖縄県与那国島の小学1年生が書いた詩に絵をつけた作品だ。この詩は、沖縄戦の組織的戦闘が終わった6月23日に毎年行われる沖縄全戦没者追悼式に合わせて、沖縄県がつのる「児童・生徒の平和メッセージ」に2013年、寄せられた。
やまもと・あきこ
1979年生まれ。琉球大学准教授。専攻は国際政治史。「日米地位協定」で石橋湛山賞を受賞した。
絵本は中古書店で安かったから自分用に買ったもので、1歳半が興味を持つのは予想外だった。動物好きな子供の目当ては、ほのぼのとした動物のイラストで「ワンワン(シーサー)!」「パッカパッカ(与那国馬)!」と指さし、「もしもしカメよ」など保育園で覚えた、童謡に合わせて振りつけた踊りを披露する。
冒頭から言葉の魅力にひきこまれているのは大人の方だ。「へいわってなにかな。ぼくは、かんがえたよ。おともだちとなかよし。かぞくが、げんき。えがおであそぶ」。なんという美しいリズム。簡潔でありながら力強いその言葉。この約1年間ウクライナから送られてくる、別離を強いられる家族やコートを着たまま疲れきって外で眠る子供たちの映像を見れば、この言葉がいかに真理をついているかがよく分かる。
「せんそうは、おそろしい。『ドドーン、ドカーン。』ばくだんがおちてくるこわいおと。おなかがすいて、くるしむこども。かぞくがしんでしまってなくひとたち。ああ、ぼくは、へいわなときにうまれてよかったよ。(中略)へいわなよなぐにじま、へいわなおきなわ」。声に出して一言一言かみしめる。何度読んでも飽きない。
残念ながら、この詩が読まれ…
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