岸田首相、NATO事務総長と会談 インド太平洋での連携強化を確認

岸田政権

田嶋慶彦
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 岸田文雄首相は1月31日夜、首相官邸で北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長と会談した。ロシアのウクライナ侵攻に直面するNATOと、軍事力を急速に増強する中国に向き合う日本が、インド太平洋地域での安全保障の連携強化を確認。首相は、現在は在ベルギー大使館が担っているNATOとの窓口について、2023年度に独立した日本政府代表部を設置すると発表した。

 会談冒頭、首相は「厳しい安全保障環境において、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化に向けて、連携がこれまで以上に重要になっている」と強調した。

 両氏の会談は昨年6月、スペイン・マドリード以来。岸田政権は昨年12月に閣議決定した安保関連3文書で、同盟国の米国だけでなく、日本と同じ外交・安保上の課題解決をめざす「同志国」との連携を打ち出した。NATOもインド太平洋地域への関与を深める姿勢を明確にしており、両氏は会談で、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)推進のための連携強化を打ち出した。

 会談後の共同記者発表で首相は、「NATOがインド太平洋地域への関心と関与を深めていることを歓迎する」と表明。両氏はNATO理事会会合や参謀長会合への日本の定期的な参加を検討するなど、緊密な意思疎通を推進することも確認した。

 具体的には、NATOが蓄積する安保上のノウハウを習得するため、防衛省などからNATOの研究施設に要員を派遣する。ロシアと対峙(たいじ)する北欧やバルト諸国には、ロシアによる情報戦やサイバーを組み合わせたハイブリッド戦を通じて蓄積してきたノウハウがあるとされる。日本側には、こうした安保上のノウハウを習得する狙いがある。NATOが加盟国各地に抱える独自の研究機関に派遣することも目指す。

 NATOは昨年6月に改訂した長期的な行動の指針「戦略概念」で、中国について「我々の利益、安保、価値観への挑戦だ」と明記した。中国への警戒感を強める背景にはロシアと中国の接近がある。NATO諸国にとって、中ロの接近は大きな懸念となっている。今回の会談で両氏は、ロシアによるウクライナ侵攻への対応や東シナ海南シナ海での中国の海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル問題についても議論した。

 会談でストルテンベルグ氏は「欧州で起きていることは、アジアにも影響があり、アジアで起こることは、欧州に対しても、大きな影響がある」と語った。

 会談では、日本とNATOの安保協力などを定めた「日・NATO国別パートナーシップ協力計画(IPCP)」にサイバーや海洋安保分野の協力、互いの演習へのオブザーバー参加の拡充などを盛り込む新たな文書の作成で一致した。

 政府関係者は「NATOトップが来るという政治的メッセージも重要だが、安保分野でどう協力を進めていけるかがカギになる」と指摘。「今回の会談を、安保協力を深める一歩にしたい」と話した。(田嶋慶彦)

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