第17回台湾人で同性、そんな彼女がくれたラブレター 心ひかれ踏み出した私
連載「それでも、あなたを」台湾・日本編①
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国家間の衝突、権力による抑圧、偏見や差別……様々な苦難を生き抜く中で出会い、また、絆を深めていく2人がいます。戦乱と分断の影が色濃くなった世界にも、確かに息づく愛の物語。それらをつむぎ、背後にある国際問題のリアルを伝えます。
台中市でカフェバーを経営する台湾人女性のアンバー(30)は昨年8月、台北市の議員事務所が集まるビルの記者会見室で、マイクを握った。隣には日本人女性のトモ(29)が座っている。
アンバーは前の日の夜、緊張で眠れなかった。目の前にはカメラを構えた20人近い記者。話し始めると手が震え、何度も言葉に詰まった。
だが、つらかった時に「あなたなら、絶対大丈夫」と励ましてくれたトモを見つめ、懸命に訴えた。
「新型コロナの入境制限で、彼女は日本に帰国したら台湾に戻ってこられない恐れがある。法的な結婚ができれば、ビザの問題は解決する」
台湾では2019年5月、アジアで最初に同性婚が法制化され、世界の注目を浴びた。
だが、2人にとっての壁は、海を隔てた日本にあった。
台湾で外国人との婚姻の条件とされたのは、相手の出身国も法律で同性婚を認めていること。日台のカップルでは、かなわない。
2人が、制度改正を求めるNGOの催した会見への出席を決めたのは、同じように苦しむ人たちの力になりたいという強い思いからだった。
アンバーは言った。
「現状では将来も見通せないし、救いもないと感じている」
アンバーが、女性にひかれる自分に気付いたのは、小学6年の時だ。中学に上がって同性愛者だと確信した。髪を短くし、いつも男性用の服を好んで着た。20歳になった時、母に告げた。家族の間でその話題が避けられていたことが、ずっと心の重荷になっていた。
無言で話を聞いた母。翌日になってこう尋ねた。「性別を変えたいということ?」
孤独深め アプリで出会ったのは
アンバーは答えた。「男性に…