第2回どうぞ使ってください…「開いた」再エネ100%の家と、集う人たち
A-stories「あったかい家つくってみました エコ・リノベーション奮闘記」
寿命約30年――。
日本の家が完成して、取り壊されるまでの平均期間だ。家は完成した瞬間が最上で、一日でも住んだ瞬間に資産価値が下がって日々刻々劣化し、20年以上たつと資産価値ゼロになって取り壊してまた新築を建てる。日本の家はそんなスクラップビルドを繰り返してきた。建物の寿命は、英国は77年、米国55年。日本のサイクルはあまりにも短い。
せっかくお金も時間も労力も費やして建てる家だ。「そんな悲しい末路はたどらせない」と意気込み、八ケ岳南麓(なんろく)の山梨県北杜市で築40年の空き家をリノベーションしたのが「ほくほく」だ。床には杉の天然板、壁には珪藻土(けいそうど)と、天然素材を意識して使っている。大切に使い込まれた民芸品に味と深みがでるように、劣化ではなく、ときを重ねた味わいが出る家にしたかった。
2021年に、5年越しの1期工事が終わったときは、ほっとした気持ちより身の引き締まる思いだった。
家の断熱・気密性能を高め、エネルギー消費が少ない構造にした上で、電気、暖房、給湯といった生活に必要なエネルギーを100%、再生可能エネルギーで自給する。脱炭素社会の実現を先取りした家は、建てて完成ではない。これからいかに活用できるかが大切だと考えていた。
そこで「家を開く」ことにした。
ほくほくの工事を中心となって率いたのは山梨県富士吉田市の梶原建築・梶原高一さん(42)だが、作業はいつでも公開し、折に触れてエコ・リノベーションのワークショップを開いたことで、のべ200人超がエコハウスづくりを体験することになった。
一心不乱に断熱材を入れたり、珪藻土を塗ったりする参加者を間近に見るうちに、「この家ができても、ぼくが独り占めするわけにはいかないな」という気分になっていた。
ぼくの主な生活の拠点と仕事場は東京にある。仕事が立て込んだときには山梨に1カ月に1回も行けないことも少なくない。せっかく快適な家ができたのに、活用されないのはいかにももったいない。
だから思いきった。家づくりに参加してくれた人に「みなさんどうぞ使ってくださいね」と呼びかけたのだ。
家が生かされた喜び
家主から解き放たれたエコハ…