光差した今年の映画興行、性被害告発でみえた「あしき構造」改革は?

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細見卓司

年の瀬。映画界のこの1年を、担当記者が振り返ります。

 興行収入という意味では、ようやくコロナ禍の長いトンネルを抜け出しそうな好調ぶりを示す1年だった。東宝の試算では、映画業界全体で過去最高の2019年以来となる2千億円を超える見通しだ。一方で、性被害や労働環境など、影の部分が一気に表面化した年でもあった。映画界の改革は道半ばだ。

 興行を牽引(けんいん)したのは、例年通りアニメだ。187億円(22日時点)の「ONE PIECE FILM RED」のほか、93億円の「すずめの戸締まり」(新海誠監督)は150億円突破を見込む。

 洋画で火をつけたのはトム・クルーズ主演の「トップガン マーヴェリック」。コロナ禍以降、「失われていた層」と指摘されてきた50代以上の客が映画館に足を運び、134億円を記録した。リピーターたちが繰り返し鑑賞するさまは「追いトップガン」と呼ばれ、社会現象になった。

 国内の興行収入は東宝、東映、松竹、KADOKAWAの大手4社で作る日本映画製作者連盟(映連)の配給作品が大半を占める。国内市場を維持するために内向き、保守的なラインアップが並びがちだが、気を吐いた作品が東宝の「百花」(川村元気監督)と松竹の「ある男」(石川慶監督)だった。

 いずれも説明的なせりふを排…

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