第2回完璧のはずだった渡辺みどりさんの終活 20年かけた遺言の想定外

有料記事「無縁遺骨」を追う

森下香枝
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 帽子がトレードマーク。皇室ジャーナリストの草分け的存在として知られた渡辺みどりさんは88歳を迎えても現役で活躍していた。9月中旬までエリザベス女王の死去や小室圭さんの司法試験などで取材を受けていた。

 渡辺さんが一人暮らしをしていた東京都千代田区マンションに異変が生じたのは10月2日。日曜日の夕刻だった。

 4日前に電話で話したハースト婦人画報社の担当編集者、吉岡博恵さんは「様子がおかしい」と気になり、渡辺さん宅を訪ねた。

 渡辺さんは新聞2紙を購読していたが、ポストに新聞がたまっていた。警察などに連絡し中へ入ると、渡辺さんはリビングの床に倒れ、すでに息をひきとっていた。傍らには携帯電話があった。

 死体検案書によると、死亡推定時刻は9月30日午後。この日の朝刊は取り入れられていたが、夕刊からポストにたまっていた。遺体には倒れて頭を打った跡があった。亡くなる直前、同じ携帯番号に繰り返し電話をかけていたが、自分の番号だった。

 渡辺さんは最近は歩行が困難だった。吉岡さんは「亡くなる前日、声に力がなく、辛そうな感じで心配になった」と振り返る。「仕事ですぐに駆けつけられず、今でも後悔が残っています」

 渡辺さんは日本テレビに勤務し、1989年に昭和天皇が亡くなった際の特別番組を仕切るエグゼクティブプロデューサーなどを務めた。退職後は皇室ジャーナリストとして「美智子皇后の『いのちの旅』」(文芸春秋)など多くの著作を執筆。趣味では80歳過ぎまで社交ダンスを楽しんでいた。

遺産管理人に旧知の弁護士 それでも

 渡辺さんは家族はおらず、50代から終活の準備をしていた。残された公正証書遺言によると、遺産管理人に指名されたのは長年つきあいがあった辻千晶弁護士。遺言執行者として友人の名前も記されていた。「遺言を作りたいと相談があったのは20年以上前で何度か書き換え、08年にようやく固まった」と辻弁護士は話す。

 だが、死後の手続きは遺言通りには進まなかった。

50代から終活を始めた渡辺みどりさん。遺言を用意するなどの準備をしていましたが、実際に亡くなると、想定外の出来事が相次ぎました。

 渡辺さんは生前、「葬儀は不…

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    江川紹子
    (ジャーナリスト・神奈川大学特任教授)
    2022年12月23日19時52分 投稿
    【視点】

     孤独死から無縁遺骨へ。前回の島田陽子さんのことといい、今回の渡辺みどりさんのケースといい、1人暮らしの身には、まったくもって他人事ではない。  誰にもやってくることを考えれば、死は「万が一」ではなく、「万が万」の出来事。いずれ来るその時

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    島康彦
    (朝日新聞ネットワーク報道本部次長)
    2022年12月22日16時31分 投稿
    【視点】

    渡辺みどりさんには朝日新聞の皇室報道で長きにわたりお世話になりました。宮内庁関係者はもちろん、現場の宮内記者にも、皇族方の動静について熱心に情報収集を続けていました。「島さん、ちょっといい?」と携帯に電話をいただき、私が同行した皇族方の地方

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