「製造現場に女性を」工場長は動いた ダメ出し連発から得た気づき

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諏訪和仁

経済インサイド

 岡内円花(まどか)(18)はこの春、高校を卒業し、社会人になった。

 勤め先は、堺市にある鋼鉄のパイプをつくる工場だ。ベージュの作業服に袖を通し、ヘルメットをかぶると、製造ライン「2号機」につく。

 できあがった直径1センチ、長さ6メートルほどのパイプの束をクレーンでつり、出荷場に運ぶ。製造ラインの部品を交換したり、パイプを親指の腹でなぞって傷やへこみがないかを調べたりする。

 覚えることはたくさんある。

 でも、大きな機械を動かすのは楽しい。

 パイプを作る機械の操作もやってみたい。先輩のやり方を見みながら、コツをつかもうと思う。

 昨年、高校で求人票をみて、この会社で働きたいと思った。体を動かした方がいい人なので。

 小学校で陸上の短距離走を始め、高校では駅伝の選手だった。座ったままの仕事はできなさそうだし。

 この工場で筆記試験を受け、見学した。

 男性がする仕事だと思っていたパイプ作りの仕事は、かっこいい。女性ばかりの職場が苦手だという人にも向いているかも知れない。

 工場に入って困ったこと?

 パイプに加工する鋼板を切る機械のハンドルが回せないぐらい固いのと、25トンのつり上げクレーンのボタンが押しにくいこと。

 厚い鋼板だと、ペンチで折り曲げる作業がうまくできない。だけど、それもこれもコツをつかめばできるような気がする。

 女性の休憩室があるので、事務所の女性と2人で使っている。

 この春に入社した高卒の女性の同期が1人、千葉県の工場にいる。離れているので、交流する機会がもっとあれば。

 ヘルメットをかぶることに抵抗はなかった。機械には、潤滑油や冷却油が使われているので、手袋や作業服が汚れるけど、あまり気にならない。

 女子トイレが新しくできた。ドアは暗証番号のボタンを押さないと入れない。休憩室にはお風呂もある。

 今は、通路から男子トイレの中が見えるので、さえぎる壁を作る工事をしている。

 ここは、創業74年を数える鋼管メーカー「丸一鋼管」グループの橘工場。男性ばかりの製造現場だけど、2009年と13年に1人ずつ、女性が入った。

 1人は結婚して相手のいる先に引っ越して退社した。もう1人は職場結婚し、子どもができて辞めた。

 現場の女性社員はそれ以来だ。

 丸一鋼管グループの国内工場は、橘工場も含めて12ある。製造現場で働く女性は、千葉県の工場にいる同期1人のほかに、福岡のグループ会社に7人で、計9人。

 12工場で800人ほどが働いているが、製造現場にいる女性はたった1%ほどしかいないことになる。

 女性をせっかく育てても、結婚、出産を機に辞めてしまう。だから会社は採りたがらなかった。それが、人手不足によって、そんなことを言っていられなくなった。

大阪の大手鋼管メーカー「丸一鋼管」が製造現場に女性社員を採用しようと動き出しました。しかし、長らく「男だらけ」の職場だった工場なだけに、一筋縄ではいきません。

 成崎敏行(56)はじっと耳…

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