「離婚後300日以内に生まれた子の父は前夫」という「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」規定を見直し、再婚後に生まれた場合の父は「現夫」とする改正民法が10日、参院本会議で成立した。2024年夏までに施行される。

 嫡出推定は、124年前の1898(明治31)年施行の民法で定められ、婚姻中に妊娠した子は法律上、夫の子とする。離婚後も300日以内に生まれた子は婚姻中に妊娠したと推定し、実際は別の男性の子でも、出生届を出すと、婚姻中の夫婦の「嫡出子」として戸籍に載る。

 扶養義務を負う父親を早く確定することが子の利益につながるとの考えに基づくが、前夫の子になるのを避けるために、母親が出生届を提出せず、子が無戸籍になるケースがある。

 この問題を解消するため、改正民法では、離婚後300日以内でも、他の男性と再婚した後に生まれた場合は現夫の子とする例外規定を新たに設けた。見直しに伴い、離婚後100日間は女性の再婚を禁じていた規定は廃止した。

 法務省によると、無戸籍者は11月時点で793人で、7割は嫡出推定が原因という。今回の見直しは再婚していない場合は対象外で、救済範囲は限定的となる。衆院法務委員会は「必要に応じて嫡出推定制度のさらなる検討を行う」とする付帯決議を可決した。

 また、改正民法では「親は監護・教育に必要な範囲内で子を懲戒できる」という「懲戒権」規定が削除された。虐待を正当化する口実になるとの指摘を受け、条文自体を削除して新たな条文を作成。「監護・教育では子の人格を尊重し、年齢や発達の程度に配慮しなければならない」とし、「体罰」や「心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動」の禁止を明記した。(田内康介)