「50歳まで生きられるか」ステージ4の肺がん、48歳パパの涙
「血管の重なりを、若い医師が読み誤ったんだろう」
2020年7月、医師免許を持つ厚生労働省の医系技官、丹藤昌治(たんとうまさはる)さん(50)は、職場の定期健康診断の結果を見て、そう思った。
胸のX(エックス)線写真で、左肺に白い影があり、精密検査を受けるようにと書いてあった。
「前年の健診で指摘はなかったんだし」
当時、新型コロナウイルス感染症の「第2波」に突入していた。丹藤さんは厚生科学課で、人事交流で他省庁や研究機関などに配属された医系技官を、厚労省のコロナ対策本部などに再配置したり、ローテーションを組んだりする職務を担い、多忙を極めていた。
しばらく精密検査を受けずに放置していると、検査が必要な対象者に受診を促す役割の同じ課の女性職員から言われた。
「精密検査が必要だと指摘を受けた後の受診率を上げなければいけません。率先して受けてきてください」
「そうだな」。丹藤さんは考え直した。
京都大学工学部で神経伝達物質を研究していた。友人が病気になり、試験管を振って研究するより人とかかわりたいと、医師を志し、広島大学医学部へ。
公衆衛生の授業で、厚労省の医系技官の話を聞く機会があった。研修医として2年間働いた後、06年4月、医系技官として厚労省へ入った。
16年4月、がん・疾病対策課でがん対策推進官に就いた。いまの第3期がん対策推進基本計画(17~22年度)のとりまとめに奔走した。
基本計画は、推進すべきがん対策の基本的な方向を明らかにするもので、第3期では「がんの早期発見及びがん検診」(2次予防)の中で、当時65~85%だった精密検査の受診率について「国は目標値を90%とする」と明記している。推進官として書いたのは自分だった。
まさか、自分ががんに
女性職員の言葉で、丹藤さんは11月、東京都内の健診センターで精密検査を受けた。
「左肺に影」
健康診断と同じ結果だった。
「やばいかも」。妻(43)…