第18回「1300年の重さ」誰が持ち上げ運ぶ 失敗許されぬ国宝「解体」

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 国宝壁画が描かれた石を一つひとつ外し、古墳外へ運び出し移動させる――。高松塚古墳奈良県明日香村)の石室解体は前代未聞の難事業だったが、絶対に失敗は許されなかった。

 2007年5月10日、解体された石の入った保護枠がワイヤでつり下げられ、動く。「ドーン」。石が揺れた。そこに描かれていたのは「飛鳥美人」として知られる西壁女子群像。16の石のうち、四つ目に取り出されていた。

 「ああ、なんか起きたな」。奈良文化財研究所(奈文研)主任研究員だった高妻洋成(60)は、揺れを止めたくても触るわけにもいかない解体関係者たちを見ていた。何度もした練習では、一度もなかったミス。みんなが青ざめた唯一といっていい瞬間だった。

 保護枠へのワイヤのかけ方に問題があった。影響がないか慎重な調査が行われた結果、支障はなし。万が一を考えて石にはレーヨン紙などが貼られてあった。

 04年、壁画のカビ発生を報道で知った高妻は当初、ひとごとのように受け止めていた。だが、奈文研の上司である肥塚隆保(72)が「国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会」の作業部会の委員になり、関わらざるを得なくなる。「僕らはずっと解体しかないと思っていた。石ごと取り出さないと壁画は修理できない」

 誰に託すのか。「俺に一人だ…

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